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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

早稲田の入試が悪いわけじゃない!
社会全体の関与で教育改革に好循環を

鈴木寛 [東京大学・慶応義塾大学教授]
【第3回】 2014年3月6日
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なぜ知識偏重の入試しかできないのか
背景にある大学の苦しい台所事情

前回に続き、大学入試から考える日本の教育の問題点について、考えていきましょう。前回は、現在の入試制度は、マスコミが一括りに語る「知識詰め込み型」「知識偏重型」ばかりではないという現状、ただし私大文系学部に多い知識偏重のマークシート方式による入試に合格するために、高校時代は英語、国語、社会の知識をひたすら詰め込んでいる現状もあり、数学などのその他の科目の学力の剥落が起きていることを解説しました。

 これらは、前回、事例として挙げた早稲田大学をはじめ、多くの私立大学の先生方も上記のような問題は認識しています。

 私も、以前、早稲田大学総長にも申し上げたことがあります。そのときのお答えは、「言うことはよくわかっているが、入試は学部自治なので、総長とて介入できない」とのことでした。

 さらに、早稲田の合格のボーダーラインにいる受験生は、センター試験では85%から9割以上できているので、その受験生たちを、論文によらず、知識量でふるい落とそうとするから難問・奇問にならざるを得ないのです。論文ならば、知識の応用力・展開力を問えて、ボーダーラインの受験生を並べることができるのです。

 もし早稲田大学をはじめ、論文問題を出していいとなれば、早稲田大学の先生方も、京都大学や慶應大学に勝るとも劣らない良問をお作りになることでしょう。しかし、なぜ多くの私立大学が、論文式を本格導入できないのでしょうか? それは、早稲田大学総長のお答えにも滲み出ていたように、大学経営に関する問題が背後にあります。

 つまり、多くの私立大学は、受験料で稼がないと直ちに経営難に陥るということです。日本の私立大学の5倍の授業料を取り、さらに日本の私立大学より一桁多い寄付金を受け取っている米国の大学であれば、優秀な学生を取るために入学者選考はコストをかける投資対象と見ているのですが、授業料も抑えられ、寄付も助成金も少ない日本の私立大学の場合は、入学者選考は投資対象ではなく、お金を稼ぐビジネスとして見なければならないのです。

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鈴木 寛 [東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官を務めた。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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