「夫婦仲が悪くなったことがすごいストレスだった。家自体に愛着がなくなって、掃除が面倒になってしまった。」(主婦 45歳)

 「家ではパソコンデスクの前に座る場所さえあればよかった。その時は彼氏もいなかったし、誰も来ないと思うと誰も見ないからいいか、みたいな感じで。」(看護師 31歳)

 大企業の社員、主婦、看護師、公務員…。ゴミをため込んでしまっていたのは、もともとは普通の暮らしをしていた人々だった。ゴミの向こう側に、過労やストレス、希薄な人間関係など、今の社会が抱える問題が見えてきた。

 近隣に迷惑をかけながらもゴミをため込む住人たちにも話を聞いた。

 鹿児島県で近所の人が何度片づけてもゴミを集めていた男性は、「生活手段の1つ」だという。男性によれば、ゴミを集め始めたのは長年介護していた兄を亡くした時から。唯一の収入だった2人分の年金が半分に減り、節約しようと使えそうなものを集め始めたのが始まりだったらしい。現在の収入は月5万円あまりの年金のみ。生活保護の相談もしたが、持ち家があるという理由で断られ、断念したという。

「孤独」がゴミ屋敷を生む?

 ゴミ屋敷の住人には1人暮らしが目立つ。都内のゴミ屋敷に暮らす80代の男性宅を訪ねた。中学校の元教師だというこの男性は、かつて妻と3人の子供たちと暮らしていた。ゴミをため始めたのは定年後のこと。重い心臓病を患い、思うように体を動かせなくなったことがきっかけだった。ちょうど子供たちの独立の時期が重なり、その後、妻とも別居。広い2世帯住宅に1人きりとなった男性はゴミを片づける気力を失ってしまったという。

 「若いときは、子供と一緒に住めるようにと一生懸命家を大きくしたんだけど、今となっては負担ですよ、家自体が。2階なんか上がったこともない。歯がゆいとあんたたちは思うだろうけど、何にも出来ないの。老いては消え去るのみで、早く言えば死ぬのを待ってるんだ」

 取材班に男性はそう語った。家を埋め尽くす大量のゴミ。それは家の主の孤独の深さを物語っているのかもしれない。

 どうすればゴミ屋敷の問題を解決することができるのか。取材班は、ある地域の取り組みを追跡した。大阪府豊中市。民間の福祉団体や市の職員、市民ボランティアが一体となって、3年前「ごみ屋敷リセットプロジェクト」(現・福祉ごみ処理プロジェクト)を立ち上げていた。これまでにおよそ50軒のゴミ屋敷を解決。再びトラブルが起きたケースがなく、その実績が全国的に注目されている。

 プロジェクトが重視するのは、ゴミをためた人に社会との「絆」を取り戻してもらうこと。「孤立」がゴミ屋敷を生み出す原因だと考えているからだ。