2013年12月、株式会社アクリフーズの冷凍食品に、農薬のマラチオンが混入され、大きなニュースとなりました。捜査の結果、同社で勤務していた契約社員の男性が逮捕されます。この事件の教訓を、「企業の不正リスク」に詳しい元監査法人勤務の大畑氏に聞いてみました。

粉飾決算や横領を引き起こす
「3つの要因」とは?

 株式会社マルハニチロホールディングス(以下「マルハニチロ」)の子会社アクリフーズでの従業員による農薬混入事件を受けて、食品製造各社が「フードディフェンス」と呼ばれる安全対策の強化に動いています。

 2月27日の日本経済新聞(夕刊)によると、工場従業員の作業着のポケットをなくす、工場への入館管理を厳しくする、防犯カメラを増設するなどの対策が検討されている模様です。

 しかし、こうしたフードディフェンスだけで食品の安全を守れるかは疑問です。フードディフェンスは、従業員などによる異物混入という行為を物理的に封じ込めることが目的です。つまり、不正行為を実行する「機会」をなくすことが狙いであるわけですが、不正行為を引き起こす要因は「機会」だけではないからです。

 会計監査の世界では、粉飾決算や横領・着服を誘発する要因として、(1)動機・プレッシャー、(2)機会、(3)姿勢・正当化、の3つがあると言われています。

 もちろん、農薬混入事件は会計不正とは異なりますが、不正を引き起こす要因については共通した部分があると考えられます。