公的年金積立金の運用方針変更で
筆者が感じる1つの「嫌な予感」

 今、筆者には「嫌な予感」が1つある。それは、公的年金積立金の運用方針変更によるリスク資産の積み増しが、「経済対策」として使われるのではないかという懸念だ。これがアベノミクスの次の手なのだとしたら、がっかりだ。

 だが、4月にはいよいよ消費税率が3%上がる。新年度の景気がどのくらい落ち込むのかが懸念されており、景気ウォッチャー調査などにも警戒感は表れている。

 安倍政権は、もちろん景気の落ち込みを小さくしたいはずだ。一方、官僚の「集合的意思」として、消費税率は8%が目的なのではなく、10%への引き上げを何としても実現したいところだろう。「2%」の物価上昇率目標を掲げる日銀も、景気の腰折れは避けたい。

 政権が景気対策を実行したいと思っても、官僚(日銀は「準官僚」のようなものだ)がサボタージュすると有効な手が打てないが、4月以降「消費税率10%」が決断される前の期間は、政権と官僚の利害が一致する。

 消費税率引き上げを決めてしまった以上、景気の落ち込みに対する景気対策は、せっかく途上にあるデフレ脱却のためにも必要だ。何かを用意していると考えるのが妥当だろう。

 しかしその1つとして、公的年金積立金による株式や外貨建て資産をはじめとするリスク資産買い増しが出てくるのではないか、と筆者は心配している。

 昨年11月に公表された、公的・準公的資金の運用・リスク管理の高度化等に関する有識者会議の、異様に「前のめり」と思える記述を見てそう思う。背後に、ビジネスチャンス拡大を狙う金融業界の後押しがあることも想像できる。

 公的年金の積立金で株を買って株価を下支えしたり、外貨資産を買って円安を実現しようとしたり、という手は、1990年代に繰り返し使われた。当時、市場関係者の間では「公的(資金)の買い」と称された。