Photo by Mitsufumi Ikeda
2月18日、米連邦準備制度理事会(FRB)がひっそりと発表した新たな金融規制が、日本と欧州の銀行を狙い撃ちにした“不利なルール変更”として物議を醸している。
これは、米国内の総資産が500億ドル(約5兆円)以上の外国銀行に対する流動性規制。金融危機など不測の事態が発生した場合の短期資金流出をカバーすべく、それに対応するドル資金を保持しなければならない、というものだ。2016年7月から施行される。
対象となる外国銀行は24行。そのうち日本勢は、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、農林中央金庫の4行が含まれる。
短期のドル調達に依存していた多くの外国銀行は金融危機時、FRBの資金供給によって救済された。現在も、こうした不安定な調達で得た巨額のドル資金を使い、米国外で債券の購入、あるいは長期のドル融資を行って稼ぐ構図は変わっていない。こうした過小資本と不安定な資金調達構造の見直しを迫るのが狙いだ。
ところが、である。今回の新規制は、新たな別の問題を孕む。米国における外国銀行は、短期で調達したドル資金の米国外への持ち出し自体ができなくなるからだ。
例えば、米国で調達した30日間のドル資金を、シンガポール拠点への30日以上の貸し出しに回す、といったことはできなくなる。邦銀各行は、短期ドル調達に占める米国での調達割合や、海外融資に占めるドル建て融資の比率を開示していないが、アジアにおける融資は「ドル建てのケースも多い」(メガバンク関係者)というから、その影響は決して小さくない。
必然的に、こうした米国外でのドル建て市場(貸出市場やレポ市場)においては、ドルの安定資金(個人預金や社債)の調達力で勝る米国銀行が有利になる可能性が高いのだ。
仮にこれに対抗して、日本や欧州の金融当局が同様の規制を外国銀行にかけたところで、「基軸通貨であるドルの調達力で勝る米銀の優位性は変わらない」(村木正雄・ドイツ証券グローバル金融ストラテジスト)だろう。