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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

難病の母親を非道な撮影で衰弱させた真犯人は誰だ?
「サル以下」と罵られ、死の責任に苦しむ28歳元AD

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第35回】 2014年3月25日
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 今回は、テレビ番組の撮影中に起きたトラブルを今も思い煩う、28歳のアシスタント・ディレクター(AD)を紹介したい。この男性は現在は無職だが、数年前までテレビ番組制作プロダクションに勤務し、ドキュメンタリーや情報番組を制作していた。

 あるとき、難病の女性とその家族らの介護をテーマにした番組をつくった。この制作の最中に、女性は「謎の死」を遂げた。今も詳細は男性に知らされていない。

 そのとき男性は、上司であるディレクターに利用されるだけ利用されたという、無念な思いがある。だが、このトラブルについて関係者は「黙秘」を貫く。彼はそんななか孤立し、退職した。

 程度の差はあれ、職場で知らず知らずのうちに仕事の失敗の責任を押し付けられる会社員は少なくないだろうが、時にはそのことが1人の社員の人生を狂わせてしまうこともあり得る。こんなところにも「悶える職場」の底知れぬ闇があるのだ。彼の胸中はいかほどのものか。読者諸氏にも一緒に考えてみてほしい。


番組製作会社が闇に葬った不祥事
ドキュメンタリー撮影で起きた惨事

 現在、竹下(仮名・28歳)は無職。今後の進路を模索しながら、ガードマンのアルバイトをして生活費を稼ぐ日々だ。

 昨年の暮れまで、都内のテレビ番組制作プロダクション(正社員数20人ほど)(①)に勤務し、ドキュメンタリーや情報番組を制作していた。ディレクターではあるが、キャリアはまだ浅い。1時間もののような長い放送時間の作品には、アシスタント・ディレクター(AD)として加わっていた。

 一昨年の冬(2012年)、トラブルが生じた。そのトラブルについての詳細は、今も番組関係者の間で伏せられているという。

 都内にある一家がいた。取材対象はこの家族だった。父親は70代前半、母親は60代前半。その間に生まれた30代半ばの長男と20代後半の嫁、さらに小さな子(3歳)がこの家に一緒に住んでいた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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