今年もまた日本ファンドレイジング協会から『寄付白書』がリリースされた。2013年度版である。調査実施が2013年なので、2012年の寄付の実態が明らかにされている。

いまの日本人の
「本当の社会貢献意識」とは? 

寄付集めの“常識”を根底から覆す!<br />「丁寧な活動報告」より、<br />「PRしたもん勝ち」という新事実日本ファンドレイジング協会発行の『寄付白書2013』。寄付に関する包括的な日本唯一の年次レポート。

 「寄付」というと、「ああ、NPOの人たち向けのものだね」と感じるかもしれないが、それは間違いだ。NPO経営者やファンドレイザーだけなく、CSR関係者や社会起業家など、社会貢献に関わるすべての人が、この「寄付白書」をチェックして、日本の寄付市場の動向を把握しておくべきだと思う。なぜならそこには、いまの日本人の「本当の社会貢献意識」が表れているからだ。

 人の本当の価値観は「お金」と「時間」と「空間」の使い方に表れる。たとえば、口では社会貢献を説いていても1円も寄付しないとか、1分たりともボランティアしない人は、実は社会貢献に価値を置いていないわけだし、逆の場合もある。口では社会貢献に否定的なことを言っていても、実際にはチャリティ・イベントに参加したり、東北の被災地にボランティアに行ったりしている人もいる。そのような人は、実際には社会貢献という価値観を持っていることになる。

 いつも言っていることだが、意向調査と実態が乖離していることはよくあることだし、しかも「お金」「時間」「空間」の使い方はウソをつかない。ファッションに価値を置いていない人間が、ブランド物のスーツを買うことはまずあり得ないし、AKBグループを応援することに全く興味のない人間が、同じ曲のCDを何百枚も(握手券や総選挙の投票権目的で)購入することもないだろう。

 そもそも寄付というものは、「社会貢献という価値」に対して、実際にどれだけのお金を人々が使ったかの結果である。つまり、生活者の本当の(社会貢献に対する)消費行動、消費の価値観を表している。そのため、たとえ寄付モデルに頼らないソーシャル・ビジネスを志向している社会起業家やNPO経営者であっても、寄付市場の動向は把握しておくべきなのだ。

なぜ日本の寄付市場が
拡大したのか?

 というわけで、『寄付白書2013』に話を戻そう。今回のハイライトは何と言っても個人寄付の動向だ。第82回でもお伝えしたが、(東日本大震災の震災寄付を除く)日本の個人寄付は、2011年までは約5000億円あたりで推移してきた。それが2012年には6931億円に増加している。2011年の数字が約5182億円だから、対前年比で約133%、約1750億円の伸びである。寄付した人の数は約4759万人で、15歳以上人口の46.7%。ざっと半分近くの人が寄付したことになる。

 ちなみに、同年の法人寄付は約7168億円(2011年度分財務統計より)。総法人数の20%が寄付を行なっている。これはつまり、個人、法人ともに約7000億円の寄付を行なったことになる。合計で約1兆4000億円。これまで、日本の寄付市場は約1兆円と考えられてきたので、けっこうな成長ぶりだといえる。

 ではなぜ、寄付市場が伸びたのか。その理由は寄付白書のデータからは残念ながらわからない。東北の震災の影響で「社会とのつながり志向」が高まっている傾向はたしかにあるが、対前年比で130%を越えるほどの盛り上がりを見せているわけではない。また、クラウド・ファンディングなどの新しい寄付の方法が登場しているものの、2000億円近い市場拡大に寄与するほどのパワーもまだない。