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領域を超える経営学
【第18回】 2014年5月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
琴坂将広 [立命館大学経営学部国際経営学科准教授],安宅和人 [ヤフー株式会社CSO]

特別対談
脳科学の視点で読み解くビッグデータの意外な構造
領域を超える発想で、より深い理解にたどり着く
【ヤフー株式会社CSO・安宅和人×琴坂将広】

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イェール大学でPh.D.(博士号)を取得した脳神経科学者であり、マッキンゼーのコンサルタントとして活躍し、現在はヤフー株式会社でCSO(チーフストラテジーオフィサー)を務める安宅和人氏。そして、ベンチャー企業の経営者からマッキンゼーのコンサルタントを経て、オックスフォード大学でPh.D.を取得し、現在は立命館大学経営学部准教授として教鞭を執る琴坂将広氏。
マッキンゼー時代をともにし、それぞれの専門領域を超えて活躍する安宅氏と琴坂氏が、さまざまなトピックについて語る特別対談。今回が最終回。

脳神経科学者の知見は2つのことに役立つ

琴坂 『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の中では、脳科学の方法を使って戦略を考える、戦略的な意思決定をしている人間を分析するといったことをやろうとしている研究者を紹介しました。安宅さんは脳科学を学ばれていますが、それは安宅さんの実務にどんな影響を与えていると思いますか?

安宅 僕が脳科学に詳しいことが何かに役立っている可能性があるとしたら、2つあると思っています。その2つの1つ目として、マーケティング的事象というのは、脳の知覚事象として理解しやすいということがあります。

 僕は、もともと人間のperception(物の見方)に興味があるんだよね。同じことを体験しても、人は1人ひとりなぜ違うように感じるのか。そういう意味で、たまたま入ったマッキンゼーで、perception technology(知覚の技術)とも言えるようなマーケティングに出合って、その関心が実務につながったんです。

琴坂 脳がどういうふうに動いているかという理解から、マーケティングに対するインサイトが出てくるということですね。

安宅 はい。脳の知覚事象として理解すると、なんでこういうときにはこうで、逆にああいうときにダメなんだろうということが理解しやすい。多くの人は、あんまりそういうふうに人間の行動を見ていないから、僕は影響を受けていると言えると思う。

琴坂 何か具体例はありますか?

安宅 ものすごく簡単な事例で言うとね、広告のGRP(延べ視聴率)と認知の関係を見ると、だいたい1週間で400~500GRPを超さないと目に見える認知の向上が起きない。非常に不可解だけど、だいたい、どうデータを取ってもそうなります。

琴坂 科学的に示せるわけですね。

安宅 少なくとも実証的には示せる。なぜか認知が上がる閾値があるんですよ。クリエイティブの良し悪しに関係なく。ある露出量を超さなければいけない。

琴坂 その関係を説明するとき、脳の構造がそういうものだからと考えるとわかりやすい。

安宅 そう、脳の神経系の構造を考えるとわかりやすい。理論的にこうでないとおかしい、という結論が出ますから。どういう状況、情報に対して認知が上がりやすいかは、多くは脳の神経の活動パターン、回路特性から理解できます。単純なんですけど、なんとなく経験値に思われていることが、神経の構造的な裏づけに基づいていることは、感覚的にも、理論的にも説明できることが多い。

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琴坂将広(ことさか・まさひろ) [立命館大学経営学部国際経営学科准教授]

慶應義塾大学環境情報学部卒業。在学時には、小売・ITの領域において3社を起業、4年間にわたり経営に携わる。 大学卒業後、2004年から、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に在籍。北欧、西欧、中東、アジアの9ヵ国において新規事業、経営戦略策定のプロジェクトに関わる。ハイテク、消費財、食品、エネルギー、物流、官公庁など多様な事業領域における国際経営の知見を広め、世界60ヵ国・200都市以上を訪れた。
2008年に同社退職後、オックスフォード大学大学院経営学研究科に進学し、2009年に優等修士号(経営研究)を取得。大学の助手を務めると同時に、国際経営論の研究を進める。在籍中は、非常勤のコンサルティングに関わりながら、ヨットセーリングの大学代表選手に選出されるなど、研究・教育以外にも精力的に活動した。2013年に博士号(経営学)を取得し、同年に現職。専門は国際化戦略。
著書に『領域を超える経営学』、共編著に『マッキンゼー ITの本質』(以上、ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism』(オックスフォード大学出版局)などがある。
Twitter:@kotosaka

安宅和人(あたか・かずと) [ヤフー株式会社CSO]

1968年、富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところ3年9ヵ月で学位取得(Ph.D.)。2001年末、マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの1人として、飲料・小売り・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド建て直し、商品・事業開発に関わる。また、東京事務所における新人教育のメンバーとして「問題解決」「分析」「チャートライティング」などのトレーニングを担当。2008年よりヤフー株式会社に移り、現在は執行役員・チーフストラテジーオフィサーとして幅広い経営課題・提携案件の推進などに関わる。
著書に『イシューからはじめよ』(英治出版)がある。


領域を超える経営学

ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏が、3つの異なる視点でグローバル経営の過去、現在、そして未来を語る。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

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