福島第一原発では濃度の高い放射能汚染水を間違えて別の建物に送っていたという。東京電力はこの汚染水誤送事件の原因を調査したが、今のところ判明していない。
要するにこれは「3年経っても原発事故は収束していない」ことを意味している。前方ばかり見て全力疾走しているから、後ろのことがおろそかになっているのだ。
換言すると、安倍晋三政権が原発回帰のための新エネルギー基本計画を閣議決定することに関心を集中し過ぎたから、事故現場に気の緩みが生じたということだろう。
この誤送事件は全くの想定外のことだというから、これからも想定されていない事態が起きる可能性はある。
数値も期限も明示されない
エネルギー基本計画の無内容さ
さて、今回の基本計画を精読してもその無内容さに驚かされる。今までのエネルギー政策、原発政策を続行していくという宣言のようなものだ。
「原子力規制委員会の規制基準に適合した原発の再稼働は進める」とした部分が計画の核心部分だ。これでは再稼働までに首相などの政治判断も不必要になり、規制委の審査結果によって自動的に再稼働していくことになる。政治や行政が不人気な決断から逃げている印象だ。
さらに気になったのは「原発依存度は、可能な限り低減」とした部分だ。深く読めば、これは必ずしも原発の基数を減らすことにはならない。原発を減らすのではなく、依存度を減らす、しかも「可能な限り」である。
これから電力消費が拡大していけば、依存度が低下しても、原発が増えていく恐れがある。むしろその可能性のほうが高いのである。「依存度の低減」は、原発政策の転換ではなく、むしろその続行を強く打ち出しているとも言える。