コンテンツ企業大手のKADOKAWA(以下、角川)は4月28日、フロム・ソフトウェアの買収を発表、グループ傘下の角川ゲームスとの事業連携を進めると発表した。フロム・ソフトウェアといえば業界では「最後の和製ゲームの砦」と言われるほど世界中から注目を集めている企業だが、両社はなぜこのタイミングで買収に踏み切ったのだろうか。(取材・文/ジャーナリスト 石島照代)
日本が世界に誇るゲーム開発スタジオ
フロム・ソフトウェア
フロム・ソフトウェア(以下フロム)の歴史は古く、設立は1986年。任天堂が初代のファミコンを発売した1983年の3年後に当たる。1994年にプレイステーション(PS)用ソフト「キングスフィールド」を発売したことが、ゲーム業界参入のきっかけとなった。以後、個性的な開発スタジオとして、新型ゲーム機が登場するたびに、そのゲーム機の魅力を生かしたこだわりのゲームを開発、固定ファンを形成してきた。
最新作のアクションRPG「ダークソウルⅡ」(PS3・Xbox360用、2014年3月発売)は、日本だけでなく全世界で高い評価を受け、最終的には、200万本を超える販売本数が見込まれているという。
創業者の神直利社長は、今のゲーム業界においては珍しい骨太の経営者であることで知られる。神社長は「今より少しでもいいものを創りたい。今よりもっといい仕事がしたい。そういう思いを持った社員が切磋琢磨しているということが、一番活気のある状況ではないかと思っています。会社と社員の双方が成長することでやりたいことを実現していきます」と会社ホームページの求職者向けメッセージでもコメントしているが、神社長を知る人によると「会社と社員の成長こそが仕事の本質」とは社長自身の人生哲学だという。
欧米では、かつてソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が育てたノーティドッグ(Naughty Dog, Inc.)や、マイクロソフトが育てたバンジー(Bungie, LLC.)など、確実にミリオンセラーを生み出す優秀なゲーム開発スタジオが活躍中である。だが、その環境においても、フロムはずば抜けた国際競争力で欧米でもトップクラスの人気と実績を誇ってきた。そのフロムがなぜここに来て買収されたのだろうか。