世界的なリゾート都市アスペンのあるコロラド州では、今年1月からマリファナが酒やタバコと同じように店頭で売られるようになった。2012年11月の住民投票で個人の嗜好目的の使用を認めるマリファナ合法化法案が可決され、21歳以上の大人は最大1オンス(約28グラム)まで購入可能となったからだ。州内には現在約160軒のマリファナ販売店が営業しているが、どこも予想を上回る大盛況で栽培が追いつかず、在庫切れの不安を抱える店も少なくないという。

日本では大麻取締法で厳しく禁止されているが、米国では近年マリファナを容認する世論が広がっている。嗜好目的の使用が認められたのは今回が初めてだが、治療目的の医療用マリファナはすでに22州と首都ワシントンで合法化されている。ギャラップ社が2013年10月に行った調査では、嗜好用マリファナに賛成する人は58%にのぼった。同社が初めて調査を始めた1969年にはわずか12%だったというが、この間に何が起きたのか。

William Galston
ブルッキングス研究所のガバナンス研究部長、メリーランド大学公共政策大学院の哲学・公共政策研究所所長を兼務。米国政治、公共政策、選挙などが専門で、クリントン政権下では国内政策担当補佐官を務めた。近年は新社会契約論の構築、政治的分極化の意味についての研究に力を入れる。同僚研究員のE・D・ディオン氏と共同で発表した『マリファナ合法化の新しい政治:米国人の意識はなぜ変わったのか』は大きな反響を呼んだ。

米国屈指のシンクタンクであるブルッキングス研究所は米国人のマリファナに対する意識の変化を政治的に調査分析した、非常に興味深い報告書『マリファナ合法化の新しい政治:米国人の意識はなぜ変わったのか』を2013年5月に発表した。その共著者のウィリアム・ガルストン氏に話を聞いた。
(聞き手/ジャーナリスト 矢部武)

『対麻薬戦争(WOD)』と
禁酒法の失敗は似ている

――ブルッキングス研究所でマリファナ関連の報告書を発表するのはめずらしいと思いますが、調査研究を始めた動機は何ですか。

 コロラド州などの合法化もありますが、それだけではありません。同僚研究員のディオン氏と話し合っているうちに人々のマリファナに対する意識が着実に変化していること、その裏に米国の麻薬対策を見直すべきだと考える人が増えていることなどがわかったからです。