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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

山形県が進める「穴あきダム計画」の大穴
屈指の清流でゴリ押しされる治水協議の澱んだ内幕

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第92回】 2014年5月13日
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最上小国川流域の治水対策協議に見る
官主導「合意形成」の巧妙なやり口

 行政が主催する会合などを傍聴し、官主導による「合意形成」の巧妙なやり口を見せつけられることがある。あまりの巧者ぶりに、背筋が寒くなることさえある。

 行政側は膨大な資料と難解な専門用語を駆使し、ひたすら自らの主張を繰り返す。自分たちで選別した学者の意見のみを拾い上げ、その裏付けに利用する。異論は排除し、一切耳を傾けない。

 その一方で、地域振興策といった甘い囁きも忘れない。そうした餌を撒くタイミングも絶妙で、相手側に諦めムードが漂い始めた頃にそっと提示する。

 相手が実行への担保なき振興策につられて土俵に上がってくれば、勝ったも同然となる。行政への異論は時の経過とともに勢いを失い、反対を叫ぶ声は消えていく。こうして官製の「合意形成」がものの見事に完成する。日本の行政のお家芸とも言える。

最上川の東北端の支流・最上小国川。ダムのない日本屈指の清流として知られる。天然アユの宝庫で、釣り客が絶えない

 山形県新庄市で4月29日、「最上小国川流域の治水対策等に関する協議」が開かれた。出席者は、山形県と小国川漁業協同組合(山形県舟形町)、地元自治体(最上町と舟形町)関係者など計25名。この日で3回目となる会合は2時間半に及んだが、治水対策等に関する協議とは名ばかりだった。県が建設を推進する最上小国川ダムの説明に終始した。

 漁協側から「こちらの意見(ダムによらない治水)も検討するということで協議が始まったはずだが、ダムの説明に尽きてしまった。非常に残念だ」(青木公・理事)と、県の姿勢を批判する意見も飛び出した。

 しかし、そのときすでに会議は最終局面に至っており、流れは変わらなかった。それどころか、県側は漁協側の指摘を完全に無視したまま、ある決断を迫ったのである。

 山形県はこの日、「これまでのダムのない川以上の清流・最上小国川を目指し総合的な取り組みを進める」として、流域の漁業振興策なるものを初めて提示した。ダム建設に同意することへの露骨な見返り策である。県側は最後の発言の場で、「(ダム案と振興策についての)漁協としての判断を示していただきたい」と漁協に回答を要求したのである。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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