ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する 野口悠紀雄

ブロックチェーンはサイバー空間での信頼関係を築く
――「存在証明」や「アイデンティティ証明」が持つ重要な意味

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第13回】 2014年5月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 2014年5月、警視庁などは、ビットコインで覚醒剤を購入し、メキシコから密輸した男を逮捕した。こうしたニュースに接すると、「ビットコインは匿名性を保証することによって反社会的な活動を助長する」という考えを持つ人が多いだろう。

 しかし、こうした評価はあまりに表面的である。そうした考えに囚われていると、仮想通貨革命の本質を見失うことになる。

 ビットコインの基礎にあるブロックチェーンの技術は、信頼性確立のために重要な役割を果たしうるのである。覚醒剤摘発は無視できないニュースだが、それにこだわっていると、社会を進歩させる大きな可能性を潰してしまうことになる。

ブロックチェーンを
存在証明に使う

 ビットコインが匿名性を導入しているのは、取引の安全性を確保するためだ。しかもそれは、「偽匿名性」である。また、非合法的活動への利用は、日銀券でも同じようにある問題だ。

 「ビットコインは反社会的ではない」というのは、こうした消極的な理由だけによるのではない。

 例えば、「存在証明」(proof of existence)というサービスが、2013年5月に始まった。これは、ブロックチェーンを用いて、文書の存在を証明するサービスだ。後になって、その時点でその文書が存在していたと主張することができる。文書は、特定のコンピュータのデータベースやブロックチェーンに格納されるわけではないので、中身が見られることはない。格納するのは文書のハッシュである。手数料は0.005BTCだ。

 これは、これまで公証人が行なっていたことを、分散的な方法で実現したものだ。著作権や特許権に関して、明らかに重要な意味を持ちうる。とくに、先発明主義を採用してきたアメリカでは、「いつ発明したか」は重要だ(ただし、アメリカでも先願主義への移行が見られる)。

 つぎに述べる「アイデンティティ証明」は、もっと根源的な意味で、信頼性確保のための手段を提供する。これは、現段階では構想にすぎない。しかし、実現すれば、社会に大きな影響がある。経済取引だけでなく、政治構造にも影響がある。日本で論議されている国民背番号導入問題にも、本質的な影響を与えうる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する 野口悠紀雄

インターネット上で使われている仮想通貨である「ビットコイン」にに対する関心が、急速に高まっている。この連載では、「ビットコインが何をもたらすにしても、それは通貨史上の大きな革命であるばかりでなく、まったく新しい形の社会を形成する可能性を示した」との認識に立ち、ビットコインの仕組みを解説し、それがもたらしうるものについて論じる。

「通貨革命か、それとも虚構か?「ビットコイン」を正しく理解する 野口悠紀雄」

⇒バックナンバー一覧