
新NISAが開始され、それまでより多くの国民が投資に興味を持つようになった。政府も「貯蓄から投資へ」のスローガンのもと、個人投資家の積極的な市場参加を促進している。しかし、野口悠紀雄氏はそのブームを冷ややかに分析する。※本稿は、野口悠紀雄『終末格差 健康寿命と資産運用の残酷な事実』(角川新書)を一部抜粋・編集したものです。
ブームで利益を得るのは
金採掘者を掘った人たち
最近の「新NISAブーム」を見ていて思ったのは、「ブームが起きて人々が一斉に走り出したときに、儲けるのは誰か?」ということだ。
1849年、カリフォルニアにゴールドラッシュが起きた。この時、世界中から集まった金採掘者の中で、金持ちになった人は1人もいなかった。あまりにたくさんの人が押し寄せてきたため、河原の砂金はあっという間に掘り尽くされてしまったからだ。
「オー・マイ・ダーリング・クレメンタイン」は、日本での替え歌は「雪山讃歌」という勇ましい歌になっているが、元の歌は、川で死んだ金採掘者の娘を悲しむ青年の歌だ。
カリフォルニア・ゴールドラッシュで儲けたのは、「金採掘者たちを掘った人たち」だと言われる。英語では、「マイニング・ザ・ゴールドマイナーズ」という。
最初は、金を掘る道具(シャベルなど)を売った人たち。本格的な成功者は、金採掘者のために、丈夫なズボンを作ったリーバイ・ストラウス。このズボンは、「リーバイスのブルージーンズ」として、いまでも残っている。