高齢化社会に本当に必要な「2つの課税方法」とは、現実と“真逆”の政策が求められるワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

高齢化社会に突入している日本は、これまでの社会の仕組みを改革することが求められている。特に介護保険の財源は大きな課題だ。野口悠紀雄氏が考える実現可能な解決策とは。※本稿は、野口悠紀雄『終末格差 健康寿命と資産運用の残酷な事実』(角川新書)を一部抜粋・編集したものです。

資産所得が介護財源になるべき
伝統的社会と現代で異なる介護の形

 介護保険の本来の構造がいかなるものであるべきかを考えるため、まず伝統的社会が介護にどのように対処していたかを、様式化した形で見ておこう。

 伝統的社会においては、家族メンバーに要介護者が発生した場合、家庭内で子供が世話をすることが普通だった。そして、介護サービスの「対価」に相当するものを、子供は相続という形で受けた。

 つまり、これは、家族内の相互扶助であり、それに対応した資産移転であったと解釈できる。ただし、介護に要する費用はその家族が負担しているのであるから、その費用だけ、遺産が減ることになる。

 ところが、現代社会においては、核家族化が進行した。このため、介護を家族メンバーの相互扶助という形では行えなくなった。それに加えて、平均余命の延長と少子化が、家庭内介護を困難にした。こうした変化に対応するため、介護保険制度が作られた。つまり、介護が「社会化」されたことになる。

 介護が介護保険制度によって行なわれる社会では、介護が発生しても、それに必要とされる費用の大部分は、介護保険によって給付される。とくに重度の介護の場合にはそうだ。