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今週のキーワード 真壁昭夫

悠久の中華思想を振りまきベトナムとも一触即発に
岐路に立つ中国、強硬路線の行き着く先を考える

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第326回】 2014年5月20日
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ベトナムやフィリピンとも領土紛争
「中華思想」を振り回す中国の懐事情

 現在、中国はわが国やベトナム、フィリピンなどとの間で領有権に関して紛争の火種を抱えている。今のところ同国の対外姿勢は驚くほど強硬で、他国との交渉余地や協調の姿勢を全く見せていない。

 そうした強硬なスタンスの背景には、習近平主席が主張する伝統的な中華思想があるのだろう。多くの異民族を抱える中国にとって、国を1つの方向に誘導するためには、漢民族による中華思想という伝統的な意識が必要になることは理解できる。

 同国の驚異的な経済発展は、そうした理念や強硬なスタンスを下支えする要因の1つになっている。また近年、世界の覇権国である米国の実力が低下していることも、中国にとって好都合のはずだ。

 ただ、中国が強硬な姿勢を取り続けると、近隣諸国との関係が悪化することは避けられない。ベトナムでは、反中デモによって多くの死傷者が出ている。強硬一辺倒のスタンスは、長い目で見れば中国の国益に叶うとは考えにくい。今野強硬姿勢を変えなければ、中国は国際社会で孤立を深めることになりかねない。

 現在、中国経済は人口構成の歪みや国内の不動産バブル、さらには過剰な生産能力など深刻な問題を抱えている。すでに成長率は明らかに鈍化しており、そうした状況下で中国政府は深刻な経済問題の解決を模索しなければならない。それは容易なことではない。

 本来、中国は時間をかけて西欧諸国のような、民主主義を基盤とした普通の先進国に変身することが望ましい。しかし、それが可能か否かは不透明な部分が多い。中国がここまで大きくなると、世界の政治・経済の情勢にとって重大なリスク要因になることが懸念される。

 中国は気が遠くなるような広大な国土を持ち、約9割の人口を占める漢族のほか、ウイグル族やモンゴル族、チベット族など、政府が認定しているだけで55もの少数民族を抱える複雑な国だ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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