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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

住民が絶句する山形県「穴あきダム計画」のタブー
学識者の見解を捻じ曲げてまでゴリ押しされる“なぜ”

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第93回】 2014年5月20日
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漁協が協議に乗って流れが決まった
屈指の清流を舞台とする県と住民の攻防

 「行政というのは切り崩しが得意なんです。特に県は交渉上手。それ専門の人もいますしね。漁協側も老朽化した施設の改修などに県の手助けが必要です。相手が(治水を所管する)県土整備部だけだったら(漁協は)蹴っ飛ばせますが、補助金の窓口となる農林水産部もいるとなるとできません。漁協側が(県などとの)協議に乗っかった段階で、流れはすでに決まったと思います」

 こう冷静に分析するのは、山形県が建設を推進する最上小国川ダムの流域の自治体関係者Aさん。前回もお伝えしたように、「ダム建設反対」を掲げる小国川漁協(山形県舟形町)は、4月29日の県との協議の場で、組合員に対してダムへの賛否を改めて問うことを明らかにした。筆者がAさんを訪ねたのは、その直後のことだった。

 Aさんは流域の自治体関係者として、ダムをめぐる県や漁協の一連の動きを間近で見てきた。事業主体の一員ではないのでニュートラルな立場で、しかも一般住民以上の情報を持つ。だからこそ、冒頭のクールな発言が飛び出したと言える。

 そんなAさんは「計画されている穴あきダムならば、清流への影響はそれほどないのでは」と語り、ダムを容認する個人的な考えを口にしていた。もっとも、「でも実際に(穴あきダムの運用)やってみないと(清流への影響は)わからない。護岸整備できればと思うが……」と語るなど、積極的にダムに賛成しているわけでもなかった。県の様々な説明を基にやむを得ないと判断したようだ。その最大の決め手となったのが、「大規模な河川整備ができない」という県の説明だった。

最上小国川は、日本屈指の清流として人気だ。だが流域の赤倉温泉は、川沿いギリギリに旅館が立ち並ぶ特殊な地域のため、しばしば洪水に悩まされて来た。

 宮城県境の山々を源とする最上小国川は、最上町と舟形町を貫流して最上川に合流するダムのない日本屈指の清流だ。天然アユの宝庫で、釣り客は年間3万人に上る。しかし、流域の赤倉温泉(最上町)で洪水がしばしば発生し、治水対策が課題となっていた。山形県は1991年度から多目的ダムの建設の予備調査を開始した。

 川沿いギリギリに温泉旅館などが立ち並ぶ赤倉温泉地区で、県は1988年11月に左岸の護岸工事に乗り出した。その一環として河床を掘削したところ温泉が噴出し、対岸にあった温泉旅館Kから源泉の湯温が10度も低下してしまったと訴えられたのである。裁判では県側が旅館側の主張に反論するでもなく、賠償金を支払うことで結着。県は1995年までに計6400万円を支払うことになった。こうして、「河床に手を加えてはならない」との不文律が広がっていった。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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