「旅に出ます。探さないでください。(笑)」……
年間60泊もの野遊びをする社長
自らのフェイスブックに、「旅に出ます。探さないでください。(笑)」というコメントを残して、時々いなくなってしまう社長がいる。
テント、焚火台、ストーブ、ランタン、野外料理道具などを製造し、本格派アウトドアライフを創造する企業、スノーピークの山井太(やまい・とおる)社長である。山井さんはなんと、年間60泊もキャンプに出かける。こんな社長、世界中を探してもいない。
社長が年間60泊もキャンプに出かけ、会社を留守にする。そんなことをして会社は回るのだろうか?
「僕は年間の事業計画を作り、月次チェックをするだけです。あとは、“未来をつくる”のが僕の仕事です」と山井さんは気負いもなく話す。
言葉ではなく、キャンプを通じて
ユーザーと企業の価値観を共有する
同社には、The Snow Peak Wayという経営哲学がある。その中には「自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供する」と謳われている。普通、企業のウェイ(経営哲学や価値観)は言葉で表現されるだけのことが多いが、スノーピークでは、自らのウェイをユーザーとのキャンプによって共有する方法を採っている。
社長自らが、年間5000人ものユーザーとキャンプをする。毎回、1泊2日から2泊3日、ユーザーと長い時間を一緒に過ごす。一緒に呑んだり、食べたり、語り合ったり、助け合ったり、そこでは原初的で人間的な交流が生じる。この生身の交流によってユーザーとの間にThe Snow Peak Wayに対する深い共感が育まれる。
「スノーピークはモノのブランドであるとともに、スノーピーカー(編注・スノーピークの熱心なファン)が作るコミュニティーブランドでもあるんです」と山井さんは語る。