「生活の科学」と称し、学校を挙げて理数科教育に取り組む和洋国府台女子。日常生活の身近な題材を数学の授業で取り上げ、わかることの楽しさを伝えることで、「数学好き」を増やし続けている。数学は苦手という先入観を払拭し、自ら学ぶ生徒を育てる秘訣とは――。数学科の室岡正義教諭に、生徒をやる気にさせる具体的な取り組みと意義を聞いた。

日常生活で求められる「数学的センス」とはなにか

 いたるところに数字があふれている情報化社会では、グラフや表を客観的に分析し、考察する力が不可欠です。こうした数学的な情報判断を迫られる場面は、日常生活の中でも頻繁に起こり得るわけで、今の時代は「私は、グラフは苦手…」と逃げてばかりはいられません。

 そこで本校の入試の算数では、毎年グラフ問題を取り上げています。昨年は2種類のバスの運行状況をあらわした、いわゆるダイヤグラムの問題を出題しました。

 2台のバス(1号車と2号車)が14km離れたW町とY町を往復するのですが、2台のバスの時速や休憩時間は異なるため、それぞれのダイヤグラムは異なる形状を描いています。そのうえで、1号車のバスの時速と、2台のバスがすれ違う時間をグラフから読み取らせる問題です。答えを得るには、(1)横軸や縦軸がそれぞれ時間、距離を表す、(2)線の交差した部分が、2台がすれ違ったことを表す、などを読み解く必要があります。グラフからわかる情報を取捨選択し、整理する――つまり、これまでの知識を融合させて解くこととなり、総合的な力が試されることになるわけです。

 私はこれを「数学的センス」と呼んでいますが、情報化社会が進む中、リスクを回避し、損をしないためにも必須の力だと思っています。

「生活の科学」の視点で“数学好き”の女子を育てる

 しかし一方で、数学は無味乾燥な学問だと敬遠されがちです。そこで本校では、「生活の科学」と銘打ち、学校を挙げて理数科教育に力を入れています。「生活の科学」とは、身近な題材を科学的な視点でとらえ、分析・考察すること。理科では実験を重視し、日々の生活の中で科学的な視点を持つ意義を教えています。

 数学でも、「新聞の折込チラシにはどんなものがあるか」など身近なテーマを課題として取り上げています。折込チラシのサイズや曜日ごとの広告内容を集計してグラフにまとめるのですが、その結果を踏まえ、「紙の規格にはA判とB判があるのはどうしてか」「食品関連の広告が平日に、不動産広告が週末に多いのはなぜか」などを考えさせます。いわばマーケティングの初歩のような学習ですが、難しい事柄でもグラフで視覚化し、簡略化すれば、相手に的確に伝えられることを学ばせています。

 実際の結果を目の当たりにすることで、生徒たちは「そうなんだ!」という新鮮な驚きを感じ、「わかること」の楽しさを実感します。結果、何気ない事柄でも「なぜ?」と根拠を突き詰める習慣がつき、自ら課題を見つけ、自ら学習する「数学好き」が増えていく――。これこそが、本校がめざす理数科教育の一つのゴールとも言えるでしょう。