オフィス出社かリモートワークの維持か、あるいはハイブリッドか。働く場所がどうあるべきかの議論が続く中、オフィスの在り方が見直されている。コロナ禍に働くという大きな経験を生かすことなく、ただ以前の状態に戻すのでは意味がない。今こそ見つめ直すべき「集う」意義とは。
働き方コンサルティング事業部
ワークデザイン研究所 リサーチセンター
花田 愛所長
大学院修了後、岡村製作所(現オカムラ)入社。専門は芸術工学。空間デザイナーを経て、現在コミュニケーションと空間環境をテーマに、これからの働き方とその空間の在り方についての研究に従事する。博士(学術)
出社かリモートか——。2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行を契機に「オフィス回帰」の機運は世界中で高まってきた。海外ではグーグルやアップル、アマゾンなどの大手IT企業でも一定の日数以上の出社を従業員に要請している。リモートワークが働き方の一つとして定着しつつある中、国際比較調査(※)では、日本はリモートワークの生産性が低いという結果も出ている。今、企業はオフィスに集う意味を真剣に考えざるを得なくなっている。
そもそも仕事で求められる成果は、定型的なものから新しい価値を生み出す非定型なものへと移行して久しい。効率だけを求める働き方そのものが問われ始めているのだ。
では、オフィスに集う意味とは何か。どのように集えば、新たな価値を創造する働き方を実現できるのか。そのヒントを与えてくれるのが、オフィス空間を手掛けるオカムラの、ワークデザイン研究所リサーチセンターの花田愛所長が出版した『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』(彰国社)だ。
花田 愛 著
定価2200円(本体2000円+税)
発行元:彰国社
本書は40年以上にわたって同社が積み上げてきた「働く」に関する研究成果を背景とし、筆者の独自の検証を基に、「集う」ことの意味を改めて追究。従業員エンゲージメント、そして価値創造力を高める「集う場=オフィス」の在り方を提示する。
花田所長は同書を出版した背景を以下のように語る。「コロナ禍ではリモートワークを余儀なくされましたが、リアルに顔を合わせられる日常が戻ってきた今、私たちは『集う』ことの価値を考え直す機会に直面しています。リアルに時空間を共にすることの必要性や期待、価値は、いっそう高まっているのではないでしょうか」。
次ページからは、独自に実施した調査によって見えてきた「行きたくなる」オフィスの要因について、具体的に紹介していく。