開設ラッシュとなっているショッピングセンター。ファミリー層を中心に着実に顧客を獲得、百貨店を脅かす存在となっている。そんなショッピングセンターを展開しているのは、小売業だけではない。不動産会社、鉄道会社などさまざまな異業種が入り乱れ、限られたパイを奪い合っているのだ。 

 JR川崎駅を降りると、目の前に出現する巨大商業施設。ショッピングセンター(SC)として、売上高全国ナンバーワンの規模を誇るラゾーナ川崎プラザだ。平日の午前中というのに、1階の食品売り場は来店客でごった返す。

 元は東芝の工場だったこの地に、商業施設の開発を提案したのは三井不動産。市場調査の結果、川崎駅周辺は人口が多い割に商業施設が少なく、近隣住民はショッピングのために、横浜や東京都心に出向いていたからだ。そんな読みは大当たり。2006年の開業以来、売上高は右肩上がりで、急成長を果たしている。

 大手不動産会社の三井不が、初めての商業施設、ららぽーとTOKYO-BAYを開業したのは1981年のこと。以降、33年が経過し、ショッピングセンターのららぽーとや三井アウトレットパークなど、全国で70以上もの商業施設を開発してきた。今や、その売り上げ規模は髙島屋と並ぶほどだ。

 強みは、何といっても情報力だ。大手不動産会社として、オフィスビルテナント3000社、商業テナント2100社、合わせて5100社と恒常的な取引があるため、いち早く土地に関する情報を入手し、出店を検討することができる。
 向こう2年間でも、すでに国内6施設、海外2施設の開業を計画。3000億円余りの新株を発行して資金調達し、そのときに備えている。

 昨今、SCは開業ラッシュだ。13年は、全国で65件と前年比2倍のSCが開業した。14年も60件を上回る計画がある。

 すでにSCの面積は百貨店の7倍、売上高も百貨店が03~13年の10年間で23%消失したのに対して、SCは右肩上がりで10%強伸ばすなど、SCは確実に百貨店の市場を侵食している。

 そんな〝肥沃〟な土壌に群がるのは、不動産会社だけではない。筆頭格は駅という不動産を抱える鉄道会社だ。

 10~30代の女性に圧倒的に支持されているルミネやアトレを展開する東日本旅客鉄道をはじめ、JR各社がターミナルの頭上で商業開発を進める。私鉄でも、東武鉄道が東京スカイツリーの足元に東京ソラマチを開業したのは、記憶に新しいところである。

一等地の立地でも
改装だけでは
時代対応に限界

 最近、存在感を増しているのが日本郵政。13年3月に東京駅前にKITTE(キッテ)をオープン、日本全国の有名飲食店を集めて話題を呼んだ。今後も14年に札幌、15年に名古屋、16年に博多と、大都市で大型郵便局の再開発を進める計画。かつて鉄道貨物の集荷拠点だっただけに、立地の良さでは百貨店に引けを取らない。

 カード事業を強化している丸井グループ。首都圏だけでなく、政令指定都市にまで店舗展開のウイングを広げている。これまで百貨店と同じ仕入れ手法を取ってきたが、ここにきてテナント導入を進めて収益構造をがらりと変える方針を打ち出すなど、攻めの姿勢を鮮明にする。

 その結果、SCと百貨店の売上高の差は、まるでワニの口のように年々広がっている。異業種のプレーヤーたちが消費者の〝財布〟と、出店余地という〝土地〟を、百貨店から奪い取った結果ともいえる。

 そもそも百貨店は、都心の超一等地に大型店を構え、他業態と比較しても優位性があったはず。にもかかわらず、劣勢に立たされているのは〝発想〟に大きな違いがあるからだ。

 百貨店はこれまで、時代の変化に売り場の改装で対応してきた。しかし、「部分的なリニューアルでは限界がある」と指摘する小売業の関係者は少なくない。

 その点、異業種のプレーヤーたちは柔軟だ。

 丸の内の大家、三菱地所は、丸の内エリアで2~3年に1棟のペースで、10年かけて6棟のビルを建て替えてきた。開発時期をずらすのは、資金計画によるところが大きいが、数年置きに建物を新しく建てることで、その時々のニーズに対応することができるというメリットもあるのだ。