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2030年のビジネスモデル

不器用だけど一生懸命――沖縄の焼き肉店、キングコングが実践する、ゆがんだ社会や組織を治すヒント

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第19回】 2014年6月12日
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 沖縄に、障がい者と健常者を隔てなく混在させ、相互に良質の影響を与え合う職場づくりによって、従業員使い捨てと他責の文化にまみれた組織風土を一変させた職場がある。株式会社NSP(砂川惠治代表取締役)が経営する「キングコング」である。

「使い捨ての飲食業文化はやめたい」

 NSPとは、ナガイ・ソーシャル・プロジェクトの略で、沖縄で4店舗の居酒屋・飲食店を経営するナガイ産業が母体となり、「企業と福祉とのコラボレーション」を目的として立ち上げた別会社で、焼き肉店「キングコング」を経営している。

 ナガイ産業は8年前、ピーク時に10億円ほどあった年商が3億円にまで落ち込むという経営危機にあった。当然、人件費、材料費などを削減し、生き残りをかけた。このとき、経営者も辛かったが、現場の従業員たちの気持ちもササクレだっていた。洋食の調理師は和食の調理師を責め、厨房は接客(フロア)を責め、従業員は経営者を責めるなど、あちこちで「他責の文化」が職場を支配した。

 当時、ナガイ産業の飲食部門を統括する部長だった砂川さんは、「離職を減らし、安定した人員にしないと企業文化も育たない。使い捨ての飲食業文化はもうやめたい」としみじみ思った。そして、教えること、学ぶことを大事にし、従業員たちの勉強会に力を入れると共に、障がい者雇用も始めることにした。

 砂川さんは、障がい者雇用を真剣に考えるために、幼いころからの親友で作業療法士である仲地宗幸さん(NSPの障がい者就労支援事業サービス管理責任者)と共に、障がい者雇用のための従来の施設をいくつも見学して回った。そこでは、同じような仕事をたんたんとこなしており、楽しんでやっている人はいないように見えた。「社会復帰というより、社会から離れていっているんじゃないか?」と砂川さんは感じた。

 ここから、NSP流の独自の障がい者就労支援への挑戦が始まった。そしてまたこの頃から、キングコングを始めとするナガイ産業の飲食業文化はしだいに変わり始め、従業員の帰属意識と定着率が高まり始めるのである。健常者だけのときには、互いに責任をなすりつけていて、従業員の定着率も低かったというのに、障がい者が混ざることによって人も組織も活性化していった。一体、何が起こったのだろうか?

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


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未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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