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高橋洋一の俗論を撃つ!

ECBが初めて導入「マイナス金利」。
「量的緩和」とどちらが効果が大きいか

高橋洋一 [嘉悦大学教授]
【第95回】 2014年6月12日
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 欧州中央銀行(ECB)は、追加の金融緩和策の中で、民間銀行のECBへの預金について利息を支払うのではなく0.1%の手数料をもらうこととした。いわゆるマイナス金利である。

ポイントは実質金利を下げること

 今回の措置について、知人の金融関係者から、次のメールが来た。

――量的緩和の方の効果が大きいのは、波及経路が、中銀がマネタリーベースを増やす→インフレ予想に働きかける→予想インフレ率の上昇→実質金利の低下→実体経済の刺激 であるのに対して、マイナス金利は、中銀当座預金にマイナス金利→当座預金の減少→民間銀行のポートフォリオリバランス・貸出増加→実体経済の刺激だが、実際は民間銀行が預金まま保有するか、短期金融市場での運用にとどまっているかもしれず、実体経済への刺激効果が小さいからでしょうか――

 この人は、かつての日銀が、メール後段にある「貸出に回らない論」から量的緩和に効果なしといっていた時代から、筆者がいうメール前段の「マネタリーベースによる実質金利下げ論」を理解してくれた人だ。しかし、いまだにかつての日銀の呪縛から逃れていないようだ。

 経済が苦境の時に、金融・財政政策を発動するのは、両政策ともに有効需要を創出できるからだ。財政政策は、政府部門が公共事業などによって直接有効需要を作るのでわかりやすい。一方、金融政策は民間部門で消費や投資等の有効需要を作るためには、「実質金利」(=名目金利-予想インフレ率)を下げることがポイントである。

 なお、変動相場制では、財政政策単独ではあまり効果が出ないことが知られている(マンデル=フレミング効果)。その点、金融政策にはそういった弱点はない。もっとも、十分に金融緩和していれば、財政政策もその効果を発揮できる。

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高橋洋一[嘉悦大学教授]

1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。

 


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