長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第3回】 2014年6月12日 樋口直哉 [小説家・料理人]

天海和尚が残した長生きの歌に学ぶ粗食の教え

※享年(数え年で表記)
イラスト/びごーじょうじ

 戦国時代から江戸時代にかけて最も長生きした人物といえば南光坊天海である。知名度はそれほどでもないようだが、徳川家康のブレーンとして江戸の都市計画から宗教政策に関与し、家康の死後も二代目将軍秀忠、三代目の家光と三代に仕えた。250年あまり続いた江戸幕府の礎を築いた僧侶だ。

 天海は謎の多い人物で、生まれもはっきりしていない。それでも百歳以上の長命であったことはたしかなようだ。最も有力な説では天海は1536年に会津で生まれ、1643年に亡くなったとされる。享年108歳。平均寿命が30代という時代に、煩悩の数と同じ年だけ生きた。

 そんな天海は長生きの心得を説いた2つの「歌」を残している。

「気は長く、務めはかたく、色薄く、食細くして、心広かれ」

 現代語に直すと、短気にならずに、よく働き、女性はほどほどに、食べ過ぎないで、心を広く持ちなさい、という感じだろうか。

「長寿は粗食、正直、日湯、だらり、ときおり下風あそばされかし」

 こちらは長生きをするにはまず粗食、正直、毎日、お風呂に入ること。そして、のんびりと生きて、時々はおならをしなさい、といったところ。

 どちらの歌にも共通するのは食べ過ぎを戒めている点と、ストレスなく生きることを薦めていることだ。

 天海の長生きの歌の教えは今でも十分にありがたいものだ。なかでも、粗食(食事制限)は最近、特に注目されるようになった。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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