ドル円は何カ月も100円台前半で膠着している。この気迷い相場をいつどのように脱するか、新たな動因は何か、市場の模索は続いている。

 当欄ではかねて、米国経済の堅調さを背景に金利先高観が醸成されるにつれ、ドル円相場は上昇に向かうと指摘してきた。特に米雇用統計はドル円相場の動きを読む最重要指標だった。FRB(米連邦準備制度理事会)が超金融緩和解除の道筋を決める材料として、失業率を前面に掲げたためだ。

 しかし、昨年末から米量的緩和の縮小が実際に始まり、イエレンFRB議長は失業率以外にも広範な指標を見ていくと表明した。雇用統計のみを象徴的に重視する機運は減退し、市場は次の新たな相場の動因を見いだせずにいる。

 実は、相場の膠着は必ずしもドル円市場に限ったことではない。世界のさまざまな市場で方向感が定まらず、ボラティリティ(相場の変動率)が記録的に低下している。米経済が自律回復し、新興国を含む世界経済が持ち直しつつあるとはいえ、グローバルにリスク資産の購入意欲が盛り上がるほど見通しが明るいわけではない。

 先導役の米経済も負の需給ギャップを抱えたまま。国内インフレの芽はほとんどなく、金利先高観が一本調子で高まるわけでもない。年初からドル円ロング(ドルの買い持ち)や米債券ショート(売り持ち)のリスクオン戦略で攻めていた投機筋は、その巻き戻しに追い込まれた。強い米指標が出ても金利が下がる状況で、ドル円強気派の気勢も削がれてしまった。

 もっとも、米景気が順調に拡大し、米金利の上昇サイクルが再認識され、ドル高円安トレンドは続くとの基本観を変える必要はない。米国の1~3月期GDP成長率は、寒波の影響で、前期比年率1.0%ポイント減に落ち込んだ。しかし、寒波後の経済データは反動増を見せており、4~6月期の成長率は4.2%ポイント増に加速するとみている。