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終戦直後のような預金封鎖は本当に起きるのか?
国民に浸透した「超財政悪化不安」の現実味と対策

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第332回】 2014年7月1日
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終戦直後の新円切替は再来するか?
過去を知る講演参加者の強い懸念

 「先生、これから戦後の新円切替のようなことが起こりますか?」

 先日、四国で行った経済講演のとき、同じテーブルにいた年の頃は80歳を超えていると思しき参加者の1人が、きれいに保存された古い紙幣を見せてくれた。そして、囁くように話しかけてきたのがこの質問だった。

 彼は、戦後の新円切替のことを昨日のことのように、鮮明に記憶していた。そして、その記憶をしみじみ話してくれた。

 「私の父は商売をしていて、それなりに裕福だった。ところが、戦後の激しいインフレの中で政府が実施した新円切替に伴う預金封鎖などで財産の大半を失い、その後厳しい環境の中で生活せざるを得なかった」

 実際の切り替えのとき、彼の父は蔵の中にあった旧紙幣や国債などを燃やせと指示したという。彼は事態を正確に把握することができず、「何故、大切なものを燃やしてしまうのか」がよくわからなかったそうだ。

 そして長いときを経た今、彼は、わが国の財政状況の悪化によって、そのときの悪夢が再現されることを心の底から心配している様子だった。彼の話がとてもリアルで、しかも話しぶりが真剣だったこともあり、筆者は質問に対する答えに窮するほどだった。

 そのとき、「一般庶民の中にも、これほど財政状況について心配している人がいるのだ」ということを痛感した。足もとの状況を冷静に考えると、すぐに戦後のような新円切替などが起きるとは考えにくいものの、長い目で見れば、そうした事態の可能性を完全に払拭することは難しいだろう。

 今後、政府はそうした事態の発生を避けるために、様々な手立てを打つことだろう。そのときに重要な点は、国民にわかりやすく財政状況を説明することだろう。そうでないと、彼のような庶民の心配を消し去ることはできない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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