最近、駅の看板広告などでプロのアスリートや芸能人を起用した寝具の宣伝が目立つ。実際、ベッドリネン(シーツやベッドカバーなど)・寝具市場は前年比103.6%の5037億円と4年連続プラス成長(2013年、矢野経済研究所予測)。睡眠関連の消費は活発だ。

 昨年11月には女性専用の仮眠スポット「おひるねカフェcorne(コロネ)」が東京・神保町にオープンし、話題だ。IT企業の「GMOインターネット」や「はてな」などでは昼寝を制度化している。今年5月にはcorneが仮眠室を持つオフィス向けにベッドや枕などをパッケージで提供するサービスも開始した。

 睡眠の大切さを啓蒙するため、厚生労働省も動いた。今年3月、11年ぶりに「健康づくりのための睡眠指針」を改定したのだ。今回の指針では、健康のために必要な睡眠時間を「6時間以上8時間未満」としている。

 しかし、バリバリ働きたいビジネスマンにとって、平日に7、8時間の睡眠時間をキープすることは至難の業だ。ではどうするか。睡眠の専門医であり、『4時間半熟睡法』や『朝5時半起きの習慣で、人生はうまくいく!』の著者でもあるスリープクリニックの遠藤拓郎氏は、「睡眠は時間だけでなく、質も大事。公式で表すと、睡眠量=睡眠時間(長さ)×睡眠の質(深さ)となります。つまり、『質』を上げる寝方をすれば、短い時間の睡眠でも十分な量を確保できる」と、話す。

 具体的な寝方の話をする前に、少し睡眠のことを解説する。やや勉強モードになるが、お付き合いいただきたい。

 睡眠は単なる休息時間ではない。じつは、寝ている間や寝る前に重要な3つのホルモンが分泌される。一つが「成長ホルモン」。子どもの体を大きくするホルモンだが、大人でも分泌され、古くなったり、壊れたりした細胞を再生し、健康を維持する。成長ホルモンが分泌されるのが寝ついてから3時間の間。この時間帯に深い睡眠を得られることが条件だ。

“90分の倍数”で寝ることが秘訣

 もう一つが「コルチゾール」だ。コルチゾールは肝臓に蓄積されたグリコーゲンを分解してブドウ糖を作り出す。このブドウ糖が寝起きから元気に動くためのエネルギー源になるのだ。コルチゾールは夜中の3時くらいから大量に分泌される。