サラリーマンの処遇は上司の胸三寸

 サラリーマンであれば、昇進や昇格、昇給やボーナスの査定も上司の胸三寸といった場合も多く、言ってみれば上司に生殺与奪権を握られているようなものです。まして、人が人を評価する以上、完全に公正で客観的な評価などあり得ません。理不尽な評価にストレスを感じながらも仕事を続けていくのは、ある意味では仕方のないことなのかもしれません。

「こんな理不尽な評価を受けるくらいなら辞めてやる!」というのもひとつの選択肢です。でも、転職しても、よほど上司に恵まれない限りは、また新しい職場で理不尽な評価にストレスを感じるだけです。

 だとすれば、理不尽な評価とうまく付き合っていく術を身につけることは、サラリーマンにとって重要な意味を持つのではないでしょうか。

「倍返しだ!」と上司に喰ってかかれるテレビドラマの主人公「半沢直樹」のような人は、実際には滅多にいません。もちろん、自分のことを不当に評価する上司に向かって、「倍返しだ! いや、100倍返しだ!」と言って日頃の鬱憤を晴らしたい人は山ほどいるでしょう。

 しかし、現実はなかなかそう簡単ではありません。そのようなことを言ってしまったら、さらに評価が悪くなるだけだからです。自分の首に刃を突き付けるようなものです。

 実際に、興味深い判例があります。2007年1月、札幌高裁において、酒席で上司を批判したことで管理職から4階級降格となった処分が適法かどうかが争点になった裁判で、「管理職には酒席でも節度ある言動が求められる」として降格処分を適法とする判決が言い渡されました。

 この判決は当時の新聞やテレビでも大きく取り上げられたので、ご記憶に残っている方々もいらっしゃると思います。この札幌高裁の上司批判裁判を取り上げたのは、この判決の是非を論じるためではありません。使い方次第で評価は「人の人生を大きく狂わせる凶器」になり得る、ということを示したいからです。

 4階級降格という処分、すなわちその根底となる評価は大変重いものです。
評価者はその評価を通達すればいいだけなのですが、本人にとってはギロチン以上の凶器に感じたことでしょう。その評価によって、自分の人生の歯車が狂ってしまったのですから。

 どの記事も話題に出していませんでしたが、4階級降格という評価結果は、4階級分の給与が下がり、仕事内容が変わり、人の目も変わるほど、大変なことなのです。だからこそ、納得できず裁判を起こしたのでしょう。