必ず共通するのは上司がヒドイこと
組織全体を蝕む「ブラック化」の予兆

 連載「黒い心理学」では、ブラックな組織で働く人が苦しみながらもなぜ辞められないのかを、心理学のいくつかの理論を紹介しながら数回にわたって解説してきた。

 しかし、ブラック組織で苦しみながらも、日々の糧のために歯を食いしばって働いている人がいる一方、ブラック組織でうまくやっている人もいる。

「うまくやっている」という言い方は、失礼に当たるかもしれない。自分では「真面目」に働いているつもりの人もいるだろう。だが結果として、ブラック組織で「長く生き残る」人は、ほぼ例外なく「ブラック社員」にならざるを得ない。

「ブラック組織」で苦しみながら働く人に、必ずと言っていいほど共通するのは「上司がひどい」という点だ。「仕事はきついが上司はいい」という職場は、基本的にブラックではない。

 ネットなどでは、「もう3ヵ月、休日が一度もない」「インフルエンザで39度の熱が出て会社に電話したら、上司に『それでも出て来い』と言われた」「台風で電車が動かなくても、定時出社するのが当たり前だと怒られた」などというエピソードをしばしば目にする。

 そういった話のどこまでが真実かはわからないが、それほどのエクストリームなケースに至る前に、組織の中では「ブラックの予兆」と言ってもいいような出来事が起こる。

 そういった出来事は、「ブラック企業」などと呼ばれる前の組織で頻繁に起こり、やがて組織全体をブラック化していく。そんなブラックの予兆となる出来事の1つを、紹介したい。

 次に紹介するのは、名前を聞けば多くの日本人が知っている企業の職場のケースだ。組織の特定と情報提供者の匿名保持のために、多少の改変をしている。

 この職場では、派遣社員と、正社員が混在して働いている。政府系の職場なので、取引先は官庁ばかりだ。なので、基本的に官庁には頭が上がらない。