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岸博幸のクリエイティブ国富論

ウィルコムへの機構支援は事実ならば論外
社会主義経済化のモラルハザードを許すな

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第74回】 2010年1月29日
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 PHS事業者のウィルコムが企業再生支援機構(「機構」)の支援を受けつつ法的整理(会社更生法活用)によって再建を目指す、と報道されました。報道は淡々と事実だけ伝えていますが、仮に報道が事実だとすれば、これはJALへの対応に次ぐ機構の暴走に他なりません。こんな暴挙を許容しては、日本は社会主義経済化してしまうのではないでしょうか。

二つのモラルハザード

 機構の設立の法的根拠である“株式会社企業再生支援機構法”(「法」)を読めば、ウィルコム支援には二つの問題があることがすぐに分かります。

 まず軽い方から行きましょう。日本航空(JAL)、ウィルコムと、機構は法が本来予定していなかった企業ばかりを支援対象としているのではないか、ということです。法第1条(機構の目的)には以下のように明記されています。

 「機構は、・・・地域における総合的な経済力の向上を通じて地域経済の再建を図り、併せてこれにより地域の信用秩序の基盤強化にも資するようにするため、・・中堅事業者、中小企業者その他の事業者に対し、・・・その事業の再生を支援することを目的とする」

 つまり、機構が本来支援すべき対象は主に地方の中堅・中小企業のはずですが、機構が支援を行なうJALもウィルコムも立派な全国区の大企業なのです。もちろん、第1条の“その他の事業者”には該当するので法律違反ではありません。しかし、大企業を支援する一方で、機構に支援を要請している百社以上の中堅・中小企業は待たされているというのは、機構の設立目的から考えていかがなものでしょうか。

 また、機構内部の陣容という人的資源の問題を考えると、JALとウィルコムで支援が手一杯になる可能性もあります。そうなってしまったら、本末転倒も甚だしいのではないでしょうか。

 ただ、その問題はもう一つの問題と比べると瑣末です。より深刻な問題として、機構の業務の進め方が明らかに法の立法趣旨と異なっているのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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