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日本を元気にする企業の条件

トヨタリコール問題がリスククマネジメントに残した“偉大なる”教訓

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
【第9回】 2010年3月5日
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トヨタ問題は、予想を超える速さと広がりで、全米を巻き込む大騒動に発展した。すでにこの問題はさまざまな角度から論じられているが、今回は企業を元気にする以前に、企業の存続を“守る”という意味で、リスクマネジメントの視点から考えてみたい。リスクマネジメントの専門家である小川真人ACEコンサルティング代表取締役に、このトヨタ問題が、我々に一体、何を語っているのか、そのリスクの所在、リスクへの対応を聞く。

何に対して神経質かは
国民性によって異なる

小川真人
(おがわまひと)
公認会計士、公認不正検査士、日本法科学技術学会正会員。慶応義塾大学商学部卒業後、1986年、ピートマーウィックミッチェル会計士事務所(現在のKPMG あずさ監査法人)に入所し、会計監査・リスクマネージメント業務に幅広く従事。2003年より2008年まで、(株)KPMG FASにて日本における不正調査サービスの責任者(パートナー)として、不正会計調査、経営者不正調査、従業員不正調査、個人情報流出事件調査、電子データ解析、不正保険請求調査など、多様な不正調査やリスクマネージメント業務を提供。2008年4月より、ACEコンサルティングを設立して独立。現在、不正防止関連サービスに加え、危機管理コンサルティング、財務デューデリジェンス・企業価値算定サービスなどを提供している。

 トヨタはアメリカの政治や世論が、どちらの方向に向かっているのかを的確に認識できなかった。それはその国や国民性によって、何に対して敏感なのかが、違うということに起因している。例えば、日本は食品に対しては、非常に神経質で、それはBSE(牛海綿状脳症・狂牛病)や中国の農薬入り餃子への反応に見て取れる。日本では、食品に対して海外からみれば合理的とは思えないレベルにまで、検査の精度を求め、果ては中国製食品は日本から出て行けというような議論まで出た。

 これと同じように、車の安全性に対しては、アメリカは非常に神経質だった。さらに、オバマ政権が消費者重視の路線を掲げているということもある。

 このことはプリウスのブレーキ問題における「0.6秒」発言に、端的に表れている。トヨタサイドが当初、「0.6秒程度で、フィーリングの問題」と言ってしまったが、アメリカでは「0.6秒も」と受け止められて、アメリカ人の怒りにヒットしてしまった。つまり、同じような問題でも、国によって、それに対する感度が大きく異なるということを認識しなくてはいけない。

原因を特定できないという
新しいリスク

 ただ、私は今回の問題は、そう単純ではないと思っている。

 トヨタであれば、車については百万回だってテストを行っているはずだ。だから、それがこれまでのように、機械的な問題や生産工程の問題であれば、さらに実験することで原因が突き止められる。しかし、今回のプリウスの場合は、どうもプログラムに問題がありそうだといわれている。ソフトウエアのバグの問題で、どのようにテストすれば問題が突き止められるのか、手法が確立されていない。

 トヨタ自動車では、最初は技術担当の佐々木眞一副社長が対応したが、問題の性格からいって、リスク管理のあり方から言えば、当然のアプローチだったともいえる。技術系人から言えば、原因が特定されていない、答が分からない段階では、「問題がない」と言ってしまうのは当然ともいえる。しかし、事態はそれでは終わらなかった。

 ただ、その背景には、これまでのリスク管理の想定を超える事態が発生しているということがあり、トヨタの品質や技術に関しては、中途半端なコメントはできないと思っている。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

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