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戦略の教室
【第10回】 2014年9月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
鈴木博毅

3分でわかる『イノベーションのジレンマ』
「見えない市場に小さく挑戦できる組織をつくる」
今さら知らないとは言えない「組織的イノベーション戦略」

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孫子からクリステンセンまで、3000年に及ぶ古今東西の戦略エッセンスをまとめた書籍『戦略の教室』から、特に有名な10の戦略を紹介する連載。最終回はイノベーション戦略の古典、クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』。なぜ、優れた経営者が誤り、大企業がベンチャーに敗れるのか?

なぜ、優れた経営者こそ判断を誤るのか?

ハードディスク業界で繰り返された「奇妙な現象」

 経営者の正しい判断で、企業が倒産を繰り返すと聞いたら、みなさんは驚くでしょうか。ハーバード・ビジネススクールの教授だったクレイトン・クリステンセンの著作『イノベーションのジレンマ』には、正しい判断ゆえに失敗するケースが紹介されています。

 ハードディスクは情報を記録し、読み出す補助記憶装置です。パソコンを日々使われる方はご存じだと思いますが、円盤型の磁気ディスクとして組み込まれています。この部品としてのハードディスクは歴史と共に、二つの進化をしてきています。

(1)同じサイズのまま記憶容量が増大すること
(2)装置のサイズを小さくすること(ただし記憶容量は減る)

 そして、このハードディスク業界に“奇妙な現象”が起こります。では、何が“奇妙な現象”だったのか?

(1)の変更が起きたとき、常に従来の優良企業が優れた技術でリードをしていました。しかし、(2)の変更では、新規参入の企業が大きな成功を収めることになったのです。同じ現象はサイズが縮小するたびに繰り広げられ、いつも優良企業が敗退したのです。なぜ二つの変更は、これほど違った結末を生み出したのでしょうか。

顧客の声に耳を傾けると選択を間違う!

 実は二つの変更は、まるで違う方向性を持っています。(1)の記憶容量の増大は、既存ディスクを購入している顧客には、純粋な性能向上です。ディスク容量が増えれば、機器の利便性が増すからです。

 ところが、(2)のサイズが小さくなることは、既存客にはメリットが一つもありません。自社にはサイズ縮小のニーズはなく、記憶容量の減少は明らかなデメリットだからです。

 顧客ニーズに敏感な経営者が正しく判断すると、(1)に投資を振り向けることになります。(2)のサイズ縮小を選んだ企業は、自社の既存顧客には新商品を売ることができません。サイズの違いを別にすれば、明らかに性能が低いからです。

(2)は、既存客に新たな魅力を提案できる活動ではないため、投資後のマーケットがイメージできません。顧客の声に耳を傾けるなら、この技術には投資できないのです。

 ところが、既存客にメリットがないはずのこの技術が、小さなサイズに価値を見出す新たな業界に販売できたとき、優良企業を粉砕する破壊的な存在に成長してしまうのです。

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鈴木博毅 

1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、組織論、マーケティングコンサルタント。MPS Consulting代表。貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略書や戦争史、企業史を分析し、ビジネスに活用できる新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。顧問先には顧客満足度ランキングでなみいる大企業を抑えて1位を獲得した企業や、特定業界で国内シェアNo.1の企業など成功事例多数。日本的組織論の名著『失敗の本質』をわかりやすく現代ビジネスマン向けにエッセンス化した『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)は14万部を超えるベストセラーとなる。その他の著作に、『企業変革入門』『シャアに学ぶ逆境に克つ仕事術』(日本実業出版社)、『戦略の教室』(ダイヤモンド社)、『「空気」を変えて思いどおりに人を動かす方法』(マガジンハウス)、『実践版 孫子の兵法』(プレジデント社)、『この方法で生きのびよ』(経済界)、『君主論』(KADOKAWA)などがある。

 


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