目標達成のために
経営資源を最大活用するのがマネジメント

 アンリ・ファヨールというフランスの経営学者がいた。経営管理論の始祖の一人に数えられる。

 彼は、プレイヤーであるよりもマネジャーであるほうが、よっぽど会社にとっての存在価値が高いと言っている。なぜならば、プレイヤーは一人前の価値しか出せないが、マネジャーは組織が100人前、1000人前の価値を発揮する起点になるからだ。組織で価値を出すときに、マネジメントはすごく大切な機能だということは間違いない。

 もっとも、マネジメントの定義は非常にわかりにくい。私も、野村総研で社会人になり立ての頃は、一体、課長が何をしている人なのか、全くわからなかった。前回も述べたが、マネジャーはプレイヤーとしての作業が嫌だから人に押し付けているといった、レベルの低い認識しかなかった。

 朝、自分たちよりも遅く出社して、いきなり新聞を読み始める。誰かれと呼びつけて、何かれと指図をして、文句を言って、夕方になるとさっさと帰ってしまう。そのくせ飲み会には必ずいる。給与はどうやら自分たちの何倍ももらっているようだ。一体、この人は何をやっているのだ? 正直、そんなふうに思っていた。

 定義がしにくいどころか、もともとマネジメントの価値というのは、やってみないとわからない。下手をすると、やっている人ですら自分が本来出している価値がわからないものではないかというふうにさえ思える。

 では、経営学者たちは一体マネジメントをどのように定義づけてきたのか。ドラッカーとダニエル・レン、クイン・ミルの定義を見てみよう。

ピーター・ドラッカー
 「マネジメントとは、成果に対する責任に由来する客観的な機能である」

ダニエル・レン
 「何らかの目標を達成するために、人間の努力と物的資源の効果的な確保、配分、利用を得て、一定の機能を遂行する活動」
 (“The Evolution of Management Thought ”1972 邦題「マネジメント思想の進化」より)