電子書籍の市場が広がるにつれ、個人出版を取り巻くサービスも続々と登場している。プロとアマチュアの垣根が徐々に低くなっており、出版のハードルが下がっているのだ。しかし、個人が電子書籍を作ろうとすると、想像以上に手間をとられるのが「ファイルの作成」だ。
現在、電子書籍はEPUB3という多言語対応型フォーマットが主流になっている。これはKindleやiBooksなど主要ベンダーも採用しているものだが、このファイルを作るには相応のエディターを用意したり、正規表現などの専門知識も必要になる。独力ではかなり面倒な作業なのだ。
もっとラクにファイルを作りたい。肝心の原稿執筆に時間を使いたい。そういった声をくみ取ったサービスがこのほど登場した。ボイジャー社のRomancer(ロマンサー)。日本の電子出版界を率いてきた同社が、運営を始めたサービスである。
このRomancer、特長は大きく分けて2つある。
まず、Microsoft WordからEPUB 3を作成できる点だ。Word2007以降(拡張子がdocxのファイル)の原稿であれば、そのままEPUB 3に変換することができる。Office Online、LibreOffice、Googleドキュメントで作成した原稿でも可能だ。
2つ目は、専用リーダーが不要な点。WEBブラウザ上で直接読めるのである。これまで電子書籍といえば、リーダーをダウンロードし、パソコンやスマホにインストールしなければならなかった。閲覧や販売の障壁にもなっていたこの手間を一気に省いたわけだ。
Romancerで製作し公開されている『映画はまさに時代の鏡だった』(土本典昭著)という作品を読んでみた。縦書きで、白地に黒の明朝体。ルビもきれいに表示されている。ページめくりはアイコンをクリックするだけ。フォントの拡大・縮小も自在だ。目次やメモ、しおり、本文内検索機能も搭載されている。リーダーアプリとほぼ同じ機能がブラウザ上で展開されているという感じだ。