これまで3回にわたって“代ゼミショック”について記してきた。今、教育産業を根本から変えるだけのインパクトをもった構造改革が進んでいることを感じていただけただろうか。ところで今回、代ゼミの「校舎撤退」報道を目にした人が、「次は駿台か」「いや、河合塾?」と色めきたった姿を私も目撃した。実際のところはどうなのか。“代ゼミショック”連載の最後に、教育産業のこれからについて具体的に見ていきたい。
変わる大学の入試制度
教育ジャーナリスト。大学卒業後、河合塾に就職。その後、独立して、有名大学等のAO入試の開発、入試分析・設計、情報センター設立等をコンサルティング。早稲田大学法科大学院設立に参加。元東京工科大学広報課長、入試課長。現在「大学ジャーナル」編集委員、「読む進学.com 大学進学」編集長、Pearson Japan K.K 高等教育部門顧問。Photo by Jun Abe
東大は推薦入試を、京大は特色入試を2016年度入試から始める。早稲田でも新思考入試の開発が進んでいる。一方で、国際基督教大(ICU)はセンター試験利用をいち早くやめて、総合教養(ATLAS)入試を展開する。教科科目に縛られずに、リベラルアーツを意識した講義受講型の入試である。
こうした流れはいずれ明治大などにも伝播していくだろう。
東大も京大も、最初は小さな定員から始めるが、徐々に定員枠を広げたいという。まだまだ高校や社会の理解を得られないからだ。
世間の人たちは教育に関してはあれやこれやと批判したがるが、自分たちが受けてきた、あるいは見てきた教育に縛られて、なかなか新しい一歩を踏み出したがらない。特に、学校の勉強をしっかりとやってきた人にこの傾向は強いようだ。学力試験を廃止するなどと言えば、彼らは間違いなく反対をする。まるで自分の存在が否定されたが如く。
だから東大も京大も丁寧に反対意見に対応するし、各地に出かけて理解をしてもらおうとしている。こうした方式に不満がある高校の教員などには「別にこの方式だけでなく、従来の学力試験もありますから」と案内する。これまででは考えられないことだ。
「大学に入学するのはハーバードやMIT(マサチューセッツ工科大学)よりも東大のほうが難しいかもしれない。でも卒業生を見れば、ハーバードやMITの卒業生が圧倒的に活躍をしている。入学者の選抜方法に問題があるのではないか」
そのような意見が文部科学省以外の省庁から出始めているという。
今動いている大学の入試改革は、文科省とか東大とか京大とかといったレベルの話ではなくなっているということだろう。