介護産業が拡大する半面で製造業が縮小するため、日本の産業構造は大きく変わる。以下ではその姿を具体的に予測し、政策対応について論じよう。

介護従事者の増大と
製造業従事者の減少

 介護従事者の増大については、この連載の第10回ですでに述べた。

 厚生労働省の資料「介護職員をめぐる現状と人材の確保等の対策について」によれば、介護職員数は、2010年において195.7万人(うち、介護職員133.4万人、介護その他職員62.3万人。常勤の他、非常勤も含む)であるが、25年度において必要とされる介護従事者数は「医療・介護に係る長期推計」では357万~375万人と推計される。なおここで、介護職員とは、直接介護を行なう従事者であり、訪問介護員も含む。

 これを他産業就業者と比べるために、総務省統計局の労働力調査による産業別就業者数を見よう(図表1を参照。この図において、13年までは実績値。14年以降は推計値)。

 02年においては、製造業1202万人に対して、医療福祉は474万人でしかなかった。ところが、13年においては、製造業は1039万人となった。つまり、10年間で約200万人減少したわけだ。その半面で医療福祉は735万人になった。つまり、10年間で約300万人増加したわけだ。

 これまでの傾向が継続するとすれば、21年に製造業が920万人、医療福祉が924万人となって、医療福祉の従業者数は、製造業就業者数より多くなる。さらに、45年には製造業が564万人、医療福祉が1494万人となって、医療福祉は、就業者数で見て製造業の3倍近い大きさになる。

図表1には、前記「介護職員をめぐる現状と人材の確保等の対策について」「医療・介護に係る長期推計」による介護職員数も示した(10年と25年の数字を直線補完したもの。25年の数字は、最大予測値)。

 製造業就業者に対する介護従事者の比率を見ると、13年には22.3%であるが、28年頃に2分の1程度になる。そして、44年には1を超える。つまり、30年後には、介護従事者数は製造業就業者数より多くなるわけだ。