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アマデウスたち

林英哲
伝統の殻を破り独創にこだわる

週刊ダイヤモンド編集部
【第19回】 2008年3月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
林英哲
写真 加藤昌人

 直径1メートル15センチの大太鼓と真正面に向き合い、背中を完全に客席に見せる。今でこそ見なれたこの奏法は、試行錯誤のすえに、編み出したものだ。斜めに構える伝統的な打ち方では、左右のバランスが偏るため、「ドンッコ」と詰まる独特のリズムになりやすい。「真正面ならば、緩急自在な打ち分けで、多彩な表現ができる」。

 大太鼓の連打は、腕に負担を強い、体力を削ぐ。足を大きく踏み出して据え、全体重をバチに乗せるようにして打ち込む。振り下ろすときには、バチの先から腕の付け根まで、むちのようにしなり、たたく一瞬、筋肉に力がみなぎる。その合理的な動きの連続は、視覚的にも十分美しい。

 太鼓との出会いは1971年、美術家を志し、細密画を学んでいたが、思いがけず「佐渡・鬼太鼓座」創設に加わることになった。「民俗芸能の太鼓にはほとんど興味はなかった」。5年後に小澤征爾指揮、米ボストン・シンフォニーオーケストラとの共演で、太鼓の芸術としての可能性を実感、84年には前例のない太鼓独奏者として、米カーネギー・ホールにデビューした。

 クラシック、ジャズ、ロック、民族音楽と、共演するジャンルは多種多様だ。2000年には、独ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団にソリストとして参加し、2万5000人の聴衆を総立ちにさせた。「誰かがやったら、次は亜流」。あくまで独創の表現にこだわり続ける。

(ジャーナリスト・古川雅子)

林英哲(Eitetsu Hayashi)●太鼓奏者 1952年生まれ。1971年「佐渡・鬼太鼓座」「鼓童」創設に参加。1982年独立、ソロ活動を開始。ジャンルを超えた世界のアーティストと意欲的に共演。今年でソロ活動25周年を迎えた。1997年芸術選奨文部大臣賞。2007年9月1~2日に国立劇場で「大地千響」を公演。

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