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競技用タイム計測装置で世界トップ
ファースト電子開発

森野 進 [経済ジャーナリスト]
【第5回】 2009年6月3日
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スイスの大手時計メーカー
「タグ・ホイヤー」からも依頼

 機器のデジタル化が進むなか、誰も果たせなかった1000分の1秒誤差の計測をアナログ技術で実現。いまやファースト電子開発のタイム計測装置は、多くのスポーツ競技で欠かせない存在になっている。

 ファースト電子開発は社員数8人の小さな会社だ。しかし、その会社に大手電子機器メーカーの熱い視線が集まっている。開発の難しいアナログ電子機器を、発注先の手を煩わせることなく次々と実現してくれるからだ。

 社長の伊藤義雄氏は若い頃からアマチュア無線の魅力にはまり、大学を卒業するころには、当時はまだ珍しかったマイクロ波の無線送信機を一から設計できるほどの技術を身につけたという。電機メーカーを経て1967年に設立した同社の強みは、電子機器のデジタル化が進むなか、無線というアナログ技術に特化することで自社の価値を高め、すべての受注案件に対して価格決定権を持つことだ。

 同社のビジネスはほとんどの場合、発注先からの「こんなものが作れないか」という悩み事の相談から始まる。受注が決まっても、発注先からもらうのは最終製品のイメージ図程度で、あとは同社が知恵とノウハウを駆使してかたちにする。営業部員はおらず、開発依頼はEメールで寄せられる。

 開発例は、微弱な電波を探知して無線式盗聴器を発見する装置、JR東日本の新幹線の切符売り場にある駅員呼び出し装置、セミナー会場で聴講者へ3~5択の質問を出し回答を瞬時に集計する無線集計器、介護用の無線通信装置、猟犬の位置を把握する装置など多岐にわたる。

 なかでも最大のヒット作が「スポーツ競技用タイム計測装置」。89年にスイスの時計メーカー、タグ・ホイヤー社から依頼を受けて開発した製品だ。スタート信号をゴール地点に無線送信し、マイコンで集計処理して、競技者ごとのタイムを計測・印刷するシステムである。

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森野進 [経済ジャーナリスト]

日刊工業新聞社の記者、雑誌編集者を経て独立。中堅・中小企業の取材をライフワークとして活躍。著書に『女性発明家の着想に学ぶ』(発明協会)、『未公開ITベンチャーの躍動』(共著・オーム社)、『明日のものづくり』(共著・日経BP社)などがある。


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