小林 ね、ショックでしょう?ということは、私たち大人がもう、子どもたちに向かって「あなたはこういう風に生きた方がいい」「こんなスキルを身につけなさい」とか、下手にアドバイスできないんだよ。もう、この世の中に絶対的な解はない。

平井 一生懸命スキルを学んでも、それがすぐに陳腐化しちゃうってことだからね。

「私たちは『チェンジメーカー』と『リスクテーカー』を育てることに特化しよう、と考えた」(小林)

小林 そう、だから私たちは「チェンジメーカー」と「リスクテーカー」を育てることに特化しよう、と考えた。そのために重視したいことの一つは「多様性」。これは英語うんぬんという次元の話ではなくて、自分のそれまでの常識を超える多様な価値観を持つ人たちと交わるということ。もう一つは、先ほどの問題設定能力。ここでは1年生の時から徹底して「デザインシンキング」を身につけさせる。まずは、解決されるべき問題を嗅ぎ付け、ブレーンストーミングでアイディアを引き出して、自分たちで調べて、検証して、実現性の高いものへと練り上げて行く。

平井 集団で協働作業する際のお作法みたいなものだね。それが身についていないと、有効な議論にならない。

小林 それと、三つ目が「失敗を乗り越えて行く力」。これは、自分自身の経験からもとても重要だと思っているのね。

 よく、「失敗を恐れずにチャレンジしなさい」って言うでしょ。その割には、失敗できるスペースを子どもたちに十分に与えていないような気がするのね。失敗しないよう、リスクがないように、と過保護に教育しておいて、社会に出たとたん、「はい、ここから先はリスクだらけです。自立して生きなさい」となる。それってすごく矛盾してると思わない?

平井 してる。

小林 失敗することイコール悪という価値観の中で育っているのだから、リスクアバース(リスクを嫌い、回避しようとする)な人間が育ってしまうのは当然だと思うんだ。

※デザインシンキング:米スタンフォード大学などの教育機関で研究が進んでいるメソッドで、問題設定の方法とイノベーションのプロセスを学ぶプログラム。

世界に解き放っても
泳ぎきれる人間を育てる

平井 ここってさ、けっこう街から離れてるよね。聞いたら、生徒は「コンビニ行くのが楽しみ」なんだって?けっこうストイックに過ごしているな、と思って。アメリカの高校って、週末になると誰かの家でパーティーがあったよね。イベントとしては「プロム」(学年の最後に開かれるダンスパーティー)が楽しみの1つで、ちょっと大人気分を味わえたり。あと、俺は成績のためだったけど、みんなボランティアやアルバイトとかもよくやってた。社会との接点が結構あったような気がするのだけど、息抜きも含めてああいう経験ができる機会ってないの?