医療介護に必要な労働力は今後増える。他方で、労働供給は急激に減少する。これまで世界のどの国も経験したことがないようなこの事態に対して、日本はどう対処すればよいのか? 世界の常識から言えば、移民を増やすしかないが、日本は世界でも例外的に移民が少ない。
少子化対策でいいのか?
労働力が減少する原因は少子化である。では、どうしたらよいのか?
日本政府は「少子化対策」が必要としている。その内容は出生率を高めることだ。そのために担当大臣まで置いている。成長戦略「日本再興戦略」でも、出生率向上によって人口を1億人に維持することが目標とされている。
これは一見して正しい政策のように見える。しかし、そうではない。
第1は、出生率が、労働問題に影響を与えるほど短期間のうちに顕著に上昇するはずがないからだ。
第2に、もっと重要な理由は、仮に上がったとしても、日本が直面する問題には間に合わないことだ。なぜなら、これまで強調してきたように、65歳以上人口のピークは2040年頃である。いまから出生率が上がっても、40年には一番年上が25歳くらいにしかならない。生産年齢にやっと達したところだ。それまでの期間は、むしろ従属人口が増えるだけで、生産年齢人口の負担はかえって増える。人口問題はきわめてイナーシャ(慣性)が強い現象なのだ。
「出生率を高める」という政策は、「何かをやっている」という言い訳の材料を作るためのものであって、直面する問題に対する有効な対策ではないのだ。
外国人労働者が
異常に少ない
労働力減少に対する適切な対策とは、外国から労働力を受け入れることである。それは世界標準になっている。しかし、日本における外国人労働者は少ない。この点で、日本は極めて例外的だ。世界の中で日本だけが、外国人労働者に固く門を閉ざしている。これはまったく非合理な態度だ。
具体的な数字を見ると、図表1(次ページ)のとおりだ。ここで用いているOECDの統計(International Migration Outlook 2013)には、「外国生まれ」と「外国人」があるが、図表1には両方を示した。「外国生まれ」は、すでに当該国の国籍を取得している労働者、「外国人」は国籍を取得していない労働者だ。日本は後者のデータはあるが、前者のデータはない。アメリカは前者はあるが、後者はない。
「外国人」の比率で見ると、多くのヨーロッパ諸国が5~10%程度の間にある。スイスは20%を超える高さだ。