チェックなき「環境整備点検」では意味がない

 ……環境整備点検を実施するまでは、PDCAが回っていなかったわけですね。

後藤 PDCAの「P」と「D」だけの会社だったと思います。私が「これをやるぞ」と決定をします。すると社員は「はい」と返事をします。でも、「はい」と言うだけで、実際にやったふりをします。新しいことを取り入れても、なかなか定着しなかったのは、私がチェックを怠っていたからです。

小山 環境整備点検シートには、各項目ごとに評価の欄が設けられていて、○か×を判断し、チェックをします。△はありません。×がつけられた項目は、PDCAの「D」が間違っていたことがわかります。すると、チェックされた側は、「どうして○がもらえなかったのか」を検証し、「どうすれば○がもらえるのか」を考え、改善に取り組みます。そうしなければ、来月もまた×がついてしまうでしょう。チェックするしくみがないと、環境整備はただの掃除大会になってしまい、改善につなげることができません。

後藤 環境整備点検をするようになってからは、「社長が点数をつけにくるみたいだから、いい点数を取ろう」という欲が、社員の中で芽生えてきました。社長がチェックをするようになると、社員は「いい点数を取るには、どうしたらいいか」「どうすればお店の雰囲気がよくなるか」「お客様に喜んでもらうために、自分たちにできることは何か」を自ら考え始めます。すると、しだいに「気づく能力」や「感性」が磨かれるようになるんですね。

「感性を磨く仕組み」が環境整備

 ……環境整備によってスタッフの「気づく能力」や「感性」が高くなったからこそ、CS(お客様満足)も上がった、ということですか?

後藤 そのとおりです。「お客様が寒そうにしているな」と気づくことができれば、温かい飲み物をお出ししたり、ブランケットをお貸しすることもできます。でも、「寒そうにしている」ことに気がつかなければ、きめ細かなサービスを提供することはできませんから。

小山 滋賀ダイハツは、CSを経営の基本的な柱に据えています。そして、お客様に「来てよかった、また来たい!」と思っていただける来店型の店舗づくりに注力していますね。「環境整備→社員の気づく力の向上→CSの向上」という好循環によって、お客様本位の経営を実現しているからこそ、日本経営品質賞を受賞できたのです。

【第7回】<br />指導500社で初!2度の落選にめげずに<br />2013年度「日本経営品質賞」を初受賞した<br />「滋賀ダイハツ販売」の秘密

【朝一番の掃除=環境整備のポイント】
●環境整備に取り組むことで、「社員の気づく力」や「感性」が向上する。その結果、きめ細やかなサービスを提供できるようになり、お客様満足度がアップする。
●環境整備点検を実施することで、PDCAが回り、改善が進む。

<著者プロフィール>
小山 昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年生まれ。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を優良企業に育て、「12年連続増収増益」を達成。日本で初めて、「日本経営品質賞」を二度受賞(2000年度、2010年度)。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開し、業種横断的に500社以上の会員企業を指導。指導企業のうち、「5社に1社は過去最高益」「13年連続倒産企業ゼロ」を達成。
2004年から「1日30万円のかばん持ち」制度を創設。小山昇のかばん持ちをすることで、現場で体感する経営者を日々育成中。現在、約70社・1年半待ちの人気ぶり。
そのほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回の講演・セミナーを開催。現場の叡智が詰まった内容は、全国各地から「今日から仕事に役立つ」と現場見学会参加者があとをたたない。机上の空論は一切なし!実務中心の内容が口コミを呼んでいる。おもな著書に、『強い会社の教科書』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』(以上、ダイヤモンド社)、『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(あさ出版)、『増補改訂版 仕事ができる人の心得』(阪急コミュニケーションズ)など多数。