漁獲量の減少で価格が高騰が高騰していたウナギ。ついに6月中旬、ニホンウナギがIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの絶滅危惧種へと指定され、日本人に衝撃を与えた。このまま庶民の味は、日本の食卓から消えてしまうのだろうか。専門家への取材を進めると、世界でも屈指の魚食大国である日本が抱える課題は、ウナギの絶滅危惧という問題だけに止まらないことがわかった。日本の食卓を揺るがす「魚食クライシス」の語られない論点を分析する。(取材・文/有井太郎 協力/プレスラボ)
「ニホンウナギが絶滅危惧種」の衝撃
あの味をもう気軽に楽しめなくなる?
日本人はもう、ウナギの蒲焼きを食べられなくなる――?
古くから「ウナギを食べる日」として知られている、土用の丑の日。2014年は7月29日となっている。だが、それを前にした6月12日、ニホンウナギがIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「絶滅危惧種」に指定された。
レッドリストの絶滅危惧種は3つに分類されるが、ニホンウナギが記載されたのは、危惧の度合いが2番目に高い「絶滅危惧1B類」。「近い将来、野生で絶滅する危険性が高い」という評価である。
日本は世界でも屈指の魚食大国だ。なかでもウナギと言えば、江戸時代から庶民に親しまれてきた魚の代表格。稚魚の豊漁を受け、足もとでは一時的な下落基調が見られたものの、ウナギ価格はここ数年、漁獲量の減少によって高騰の一途を辿っている。この上、ウナギが国際的な絶滅危惧種になれば、あの濃厚で香ばしいウナギの蒲焼きを気軽に嗜むことは、難しくなるのではないか。
世間ではこうした不安が募っているが、実際のところはどうなのだろうか。専門家に詳しく話を聞いてみることにしよう。
「ウナギが食べられなくなることを過度に恐れる必要はないが、憂慮すべき事態ではある」と語るのは、水産総合研究センターで淡水魚の研究を行う内田和男氏だ。