「目下のところ、スーパーからの注文数を要求通り出荷できていません。また、バターが足りませんよ」。乳業メーカー幹部は、こう深刻な表情でつぶやいた。
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今、国内でバター不足がまん延している。店頭では「お1人様1点限り」など購入を制限する表示も目立ちだした。
しびれを切らした農林水産省は、9月26日、バター3000トンの緊急輸入措置を発動した。緊急輸入の決定は、今年5月に続いて2度目のことだ。
実は、緊急輸入がなくとも、明治や森永乳業などの大手乳業メーカーは、バター需要が高まる年末のクリスマスシーズンを乗り越えられる。むしろ、農水省の狙いは、年明け分の在庫確保に走ったメーカーの“出し惜しみ”を解消し、店頭での欠品パニックを回避することにある。
確かに、今回の措置によって、当面のバターの需給は安定することだろう。だが、乳業業界関係者は、「このままでは、来年以降も不足問題を繰り返すことになる」と懸念を表明する。
2008年にも、店頭からバターが消える大騒動が起きたことは記憶に新しい。バター不足は半ば慢性化している。緊急輸入措置は小手先の手法にすぎず、バター不足の根底にある構造問題の解消にはつながらない。