先日ノーベル賞を受賞した中村修二・米UCサンタバーバラ校教授の名を最初に世に知らしめた“職務発明訴訟”。特許法35条に基づき、企業内で業務として行う発明は、発明者個人に帰属し、企業がその譲渡を受ける場合には「相応の対価を支払う」と定められている。2000年代前半に、中村教授などの元従業員が、相次いで元職場を訴えたことで耳目を集めた。

職務発明の帰属先は会社に <br />求められる報奨体制の整備改正特許法では、選択制で職務発明特許を会社に帰属させることができるようになる(特許制度小委員会)
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 その職務発明が今、再び注目されている。その帰属先をめぐり特許法の改正が進んでいるからだ。特許庁の審議会で10月17日、内容につき大方の合意がなされ、早ければ臨時国会に改正法案が提出され、16年から施行される。

 今回の改正では(1)社員が出願する特許は会社の帰属とする、(2)ただし、その際には発明者には現行の対価請求権と同様の権利を保障する、(3)また、国が制定したガイドラインに従って社員の発明に対するインセンティブ協議を行うことを義務付ける──の3点が定められる見込みだ。

 一定水準の報奨を支払う仕組みを企業側に整備させることを条件に、現行法では社員に帰属していた職務発明の特許を、最初から企業帰属にできるというものである。

 だが、「実質的には企業の選択制に近いものになる」(審議会委員長を務めた大渕哲也・東京大学教授)見通しだ。中小企業などではそもそも知的財産を管理する必要性を認めていないところも多く、全てに新制度が導入されると、企業側の負担が大き過ぎるとして、日本商工会議所から反対の声が上がっていたからだ。