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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

上海森ビルとスカイツリーの照明に
現地文化を考慮するということを思う

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第231回】 2014年11月6日
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「上海森ビル」の照明の変化

 先週、上海出張時に、上海市内を流れる黄浦江の畔(ほとり)にあるレストランで日本企業関係者と一緒に食事をした。レストランに行く途中、車窓から浦東の陸家嘴にある上海環球金融センター(俗称、上海森ビル)のイルミネーションをちらりと見た。ピンクのリボンの形をしていて可愛い。ビルの照明が個性的かつ強烈な浦東においても、それなりに目立っている。いつから変わったのだろうか、とぼんやりと思索した。

 上海環球金融センターが完成した最初の頃の照明はいまのような感じではなかった。東京スカイツリーのような、日本人が好む詫びとさびを念頭に入れた照明だった。そうすると、強烈な照度で勝負する浦東の他のビルたちが放つ個性的な光の中で、上海環球金融センターの照明はまるで消されてしまったかのような、弱々しい存在だった。

 数年前、上海環球金融センターで働いている森ビルの関係者から愚痴を聞かされた。「この照明のデザインはよくなかった。日本人が好むセンスではこの浦東では、いや中国では勝ち残れない」と。

スカイツリーの照明の評判

 確かに東京のスカイツリーにおいては、夜空を彩るライトアップパターンが「粋」「雅」を意識したデザインだった。しかし、わが家の窓から直に見えるこのスカイツリーの照明を、私が最初からあまり好きになれなかった。電気が切れそうな弱々しさもさることながら、スカイツリーが多くの断片に切れてしまったように見えてしまうことも気に入らなかった。外国人の私は日本的美をあまり理解できなかったのでは、と思い、批判的な発言を控えていた。

 しかし、ある日、家の近くの駅前の路上で信号を待っていたら、日本人数人がこのスカイツリーの照明について議論していたのを偶然、耳にすることができた。なんと彼らはその照明のことを批判している。しかもその批判の内容も私が思っていたのと同じだった。

 もちろん、デザイナーが主張するその国の美を理解できない本国人がいることは別に驚く必要もないし、問題にすべきかどうかも議論の余地がある。これは別に日本だけの現象ではない。中国人デザイナーが表現した中国の美に、中国国民が批判の矢を放つこともよくある。アメリカでも見られる現象だ。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


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地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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