報道によると、アジアで高速鉄道計画が実現へ動き始め、マレーシアとシンガポールを結ぶ路線は来年にも入札を行う、という。インドやタイなど、構想段階も含めると計画の総延長は約1万キロに上る巨大なプロジェクトが動き出している。この成長するアジアを舞台に、日本や中国などからの売り込み合戦が熱を帯びている、と日本のメディアが報じている。

高速鉄道にかける日中の意欲と焦り

 アジア高速鉄道関連のニュースを読みながら、私は数年前にシルクロードの途中にある蘭州の郊外で見た光景を思い出した。植物があまりない黄土高原の一角に、巨大な工事現場が現れた。建設途中の高架線路の土台が延々と地の果てに延びて行く感じだ。「これは何の工事か?」と地元の人に確かめたら、中央アジアに伸びる高速鉄道の操車場の建設現場だ、という。アジア最大と言われたが、最初はピンとこなかった。しかし、落ち着いてくると、中央アジアに伸びて行く高速鉄道にかける中国の期待の大きさが見えてくる。

 数ヵ月前に、このコラムに、「欧亜を結ぶ壮大な路線計画をテコに 高速鉄道の海外輸出を加速させる中国」という記事を書いたのも、中国のこうした動きを体感したからだ。

 マレーシアの首都クアラルンプールで先週開かれた鉄道展示会で、JR東日本の小縣方樹副会長は、「絶対に落札したい」と公言してはばからなかったそうだ。言うまでもなく総事業費が約1兆3000億円、2020年の開業を目指すクアラルンプールとシンガポール間の高速鉄道計画が念頭にあったからだ。世界では販売されている日本の完成品が減っている中で、新幹線とその技術を世界に売り込みたいという日本の意欲と焦りがその発言に滲み出ていると私は感じている。

 一方、経済情勢が厳しさを増してくる中国も同じ事情だ。従来の工業製品の売れ行きが落ちているなかで、その穴埋めに新しい人気製品を販売したいという意欲と焦りも、日本のそれに負けてはいない。日本の半分ほどに留まる建設費の安さと工期の短さを武器に、中国もアジア高速鉄道計画に猛烈にアタックしている。