「五月病」は良く知られている。4月に環境が変化したことによる緊張が一段落する5月に到来する病であるが、 「3年目の病」という病気も存在することはご存知だろうか?
「3年目にはどうせ異動するから……」
硬直化した”先の見える”人事政策の弊害
「3年目の病」とは、3年程度で人事異動が行われることが一般的な保険会社や銀行の総合職のうち、中位層が陥りやすい病だ。「3年程度でどうせ転勤なので3年目は無理をしないで仕事をしておこう」「この部署での在籍もあと少しなので、適当に流しておこう」と考えることで、パフォーマンスが大きくダウンする。
周囲も、「○○さんは3年目だから……」ということで、仕事の依頼を遠慮したり、特に中長期的な仕事に関わらせることを控えたりする心理が働く。こうした周囲の遠慮が、本人の意識に輪をかける悪循環が発生する。
3年程度で人事異動があるという決まりきった異動方針は、硬直化した人事施策の一例。要するに、自分のキャリアパスが見えすぎることで、パフォーマンスの低下を生んでしまうのだ。
異動先の意味づけを固定化することも、やる気をそぐ。例えば、実際に私が勤務した保険会社では、「法人営業部へ異動するのは傷を負った者ばかりだ」「人事部へ異動すればエリート・コースへ乗ったことを意味する」「支社を2場所連続で異動すればもう本社へ戻れない」といった類の”定説”が存在していた。
こうした定説ができるほど、異動先の意味づけは固定化し、それにより社員のモチベーションは明らかに下がる。