「なぜ、いま解散なの?」と首を傾げた人も多いに違いない。

 11月21日、安倍首相は衆議院を解散。12月2日公示、14日の投開票が決まった。 

 目の前には社会的課題が山積みになっている中で、今回起きた突然の解散総選挙に対し、いまも引きこもる当事者や、過去の引きこもり経験を生かして活動している元当事者は、どのように感じているのか。いろいろな状況にある人たち計十数人にメールや電話で聞いてみたところ、大半が「投票に行く」と答えながらも、いまの政治に対する失望と困惑、絶望感といったものに覆われていて、今後の日本に期待できないと思っていることがわかった。

元当事者の自助団体代表らも絶望
「今回の解散は“腹切り解散”だ」

「もう日本はダメだなーって、思います」

 そう明かすのは、関西で当事者たちのために仕事を創り出し、事業活動を展開する自助団体を立ち上げた30歳代の元当事者。

「何か失敗すれば、すぐに辞職することで責任を取ったことになり、またそうすることを要求する国民全体の精神と雰囲気に、深刻な問題を感じました」

 トラブルが起きて、その結果、人が傷つくような被害を被ったとき、加害者側はいまの組織を維持していくために、責任者が辞職することで、一歩先に進めようという「腹切り」的な責任の取り方が伝統的に行われる。

 今回も、閣僚の相次ぐ辞任から、議席が減ることも覚悟して突っ込む、安倍首相の“腹切り解散”ではないかと彼はいうのだ。

「実際の責任の取り方には、時間がかかる場合があると思います。問題が起こったり、傷ついたりする人がいる場合、当事者の声に対して応答する、対応する体制を立て直すことが本質的には重要な責任だと思うのです。日本では何か失敗を1回でもすれば、すべてを捨ててその場を去る。自分の失敗と自己存在の否定が同時に生起しています。そんな極端な失敗に対するリスクを、国民全体が煽って作ってきたところがあるんじゃないでしょうか。英語では「責任」はResponsibilityですが、Response=応答する責任、という投げかけられた問いや疑問に対して自分なりに応答することが責任だと日本では考えられていると思います。その地位を捨てて、消え去ることではないと思います」