牛丼店「吉野家」を展開する吉野家ホールディングスが、牛丼などに使うコメを国産米100%にする方向で最終調整に入っていることが、週刊ダイヤモンドの調べでわかった。

「牛すき鍋膳」など高付加価値商品に力を入れて商品単価の引き上げに力を入れる吉野家
Photo by Hirobumi Senbongi

 吉野家は、東日本大震災後の国産米価の高止まりを受けて、2012年に、海外店舗で使用実績があった米国産米を導入。その後、吉野家で使用するコメ全体の1割超まで米国産米の比率を高めていた。

 今回、吉野家が国産米へと回帰する最大の理由は、コメの調達コストの引き下げ――すなわち、牛丼の原価率の低減にある。

 その背景には、戦後最低水準となった国産米価の暴落がある。農林水算省によれば、今年9月の国産米の相対取引価格(税込み)は60kg当たり1万2481円。これに対し、今年度の米国産主食用短粒種(主に、国産米と同じジャポニカ米)の価格は同1万3738円となり日米価格が逆転した。

 また、“国産米100%”の触れ込みは、国産信仰の根強い消費者に、高付加価値路線をアピールすることもできる。国産米回帰は、「牛丼の原価率低減」と「消費者への訴求」の目的を同時に達成する一石二鳥を狙ったものなのだ。

国産米が助長する消耗戦

 ところが、吉野家による国産米回帰は、競合チェーンとの差別化にはつながらず、むしろ、商品の同質化と価格競争を助長することになりそうだ。