2006年1月16日、証券取引法違反の容疑により、ライブドア本社や堀江貴文社長(当時)の自宅・新宿の事業所などが突如、異例の東京地検による家宅捜査を受け、翌日以降、株式市場は急落、この衝撃的ニュースは、後に「ライブドアショック」と名付けられた。
さらに、2010年6月11日、金融庁からの検査忌避の告発を受け、警視庁が日本振興銀行を捜索し、7月14日、木村剛(前会長)は警視庁の取り調べを受け、同日銀行法第63条第三号違反(同法第25条に基づく検査の忌避)容疑で警視庁に逮捕、8月3日、起訴された。2012年3月16日、東京地方裁判所において懲役1年執行猶予3年の有罪判決(求刑は懲役1年の実刑)を受け、月末までに控訴せず刑は確定した。
このように、企業はある日突然、行政・司法当局からの調査・検査・捜査を受け、現場はパニック状態の中、対応の失敗などで調査妨害や検査忌避などのさらなる失策を重ねてしまうことが多い。報道でも明らかにされていない当局からの調査・検査・捜査とは一体どのようなものなのか、そしてどのように対応すべきなのかを検証してみたい。
報道でも明らかにされていない
当局による立入調査・検査とは?
この場合の当局とは、検察庁、警察組織、監督官庁、公正取引委員会、証券取引等監視委員会、税務署等の司法、行政組織全般を意図しており、立入調査・検査への対応を怠ると対象企業及び役職員に大きな不利益が及ぶ可能性がある。
当局担当者は、調査・捜査の過程で、不祥事の端緒の把握、内部告発の検証、証拠隠滅の恐れなどを考慮し、必要に応じて調査・捜査を行なう。それは一切の予告なく実施されるもので、本社、支店・営業所、工場、研究所、関係者自宅等に及び、5名前後からときには100人を超える大規模なものもある。概ね、最初の役職員が出社する前から現場近くで待機し、出社を待って、早朝から開始されるのが通例である。その期間は1日で終了する場合から1ヵ月を超える事例もある。
対象となった企業の中には、パニック状態の中、地下倉庫やロッカー、トイレ清掃スペースなどに不用意に重要書類を隠蔽したり、自宅に持ち帰ったりと、映画やドラマで描かれているような不適切な状況を実際に不正に行なった事例も少なくない。
しかし、企業側からすれば上記のような対応は絶対にすべきではない。対象となった企業は、当局が法律上の権限を有する範囲において、調査・捜査・検査に協力しなければならない。同時に、企業は業務に与える支障を最小限に抑え、不合理な制約や不利益を受けることを防止することにも注力する。
対象となった企業については、その状況が発生した瞬間から、役職員の行動指針として(1)当局の要求には適切に対応すること、(2)当局の調査・捜査・検査は決して妨害しない、(3)企業側の利益を守るために調査・捜査・検査の内容を把握すること、(4)後日、フォローアップするために当局側の主要担当者を確認すること、が求められる。また、突然の立入調査等で失敗しないためには、従前からの準備とトレーニングが不可欠である。